勇気と情熱 次世代へ 「復帰の歌」歌碑建立で式典 沖永良部島

2023年12月20日

地域

「復帰の歌」歌碑を除幕し、記念撮影する関係者=19日、沖永良部高校

米軍統治下の沖永良部島で歌われた「復帰の歌」の歌碑建立記念式典が19日、同島の沖永良部高校であった。関係者が同校中庭に建立された歌碑を除幕後、復帰運動を経験した2人が講演。当時の島民の苦労や日本復帰を願う熱情に思いをはせるとともに、恒久平和を誓った。

 

講演した田中和夫さん

沖永良部では1952年、徳之島と沖永良部島の間に当たる北緯27度半以北の奄美諸島の施政権を日本政府に返還するという「沖永良部・与論二島分離返還説」が報道されたことを機に、沖永良部高校の教職員、生徒会が中心となって二島分離反対運動が展開された。「復帰の歌」は運動を鼓舞するため作られた曲で、当時同校教諭だった佐伯植美さんが作詞し、柴喜与博さんが作曲した。

 

講演した竿田富夫さん

歌碑建立は奄美群島の日本復帰70周年の今年に入り、沖永良部高校同窓会、同校、和泊、知名両町の教育委員会が実行委員会を発足して準備を進めてきた。

 

この日は歌碑の除幕後、体育館に移動して式典を開催。同校の全校生徒や関係者らが出席した。同校同窓会長で実行委の名間武忠会長は「復帰70周年を迎える今日、われわれは争いのない日常生活を送ることができ、改めて平和のありがたさを感じる。高校生の皆さんには平和の尊さとわれわれの先輩方が全身全霊を傾けた復帰運動、島民の心を支え一丸となった『復帰の歌』の歴史を次世代へ語り継いでほしいと願う」とあいさつした。

 

52年当時、沖永良部高校2年生だった田中和夫さん(92)=知名町=と竿田富夫さん(88)=和泊町=が講演。田中さんはクラスや生徒会での討論会、トラックに乗って島中を回り、二島分離反対を訴えたことなどを振り返り、在校生に向けて「高校生の力は大きい。島の最高学府、沖高生として島おこしの軸となってほしい」と呼び掛けた。

 

竿田さんは「復帰の歌」誕生にまつわるエピソードを紹介。3番の歌詞にある「返す返さぬ熱次第」を取り上げ、「なぜ2島は返還されないのか、問題は私たちの心にあった。黙っていてはいけないと。歌は私たちに勇気と情熱を与えてくれた。沖永良部の復帰運動は『復帰の歌』そのものであった」と強調した。

 

最後に「復帰の歌」を出席者全員で合唱した。

 

式典に参加した同校生徒会長の今井ひなたさん(17)=2年=は「自分だったら怖くてできなかったと思う。でも怖いからやらないのではなく、島のため島民のため動きだした当時の生徒たちはかっこいいと思った。先輩たちの熱意を見習い、これからの学校生活に生かしていきたい」と話した。