移住「お試し」ハウス完成 NPOが龍郷町で展開
2019年10月30日
地域
奄美に「観光ではなく住む感覚で集落暮らしを体験したい」「島出身だが実家がない」「一軒家に住みたい」―。そんな人向けにこのほど、龍郷町龍郷の空き地にゲストハウスとして規格住宅2棟が完成した。運営するのは空き家改修を手掛けるNPO法人ねりやかなや(佐藤理江代表)。ゲストハウスに寝泊りしながら島暮らしを「お試し」してもらい、理想のすみかを探してもらうのが狙いだ。
同法人は奄美群島にある空き家を調査し、所有者と交渉・改修し、入居希望者に貸し出す事業を展開している。背景には、集落内に空き家が増える一方で、島外からの移住希望者が増えている現状がある。地域の課題解決とニーズをマッチングさせている。
同法人と東洋大学が2018年10月に行った空き家調査によると、龍郷町内の住宅総数3305軒のうち、242軒が空き家だった。空き家比率は7%と県平均(12%)より低いものの、空き家の4割は老朽化が進み、廃虚に近い状態だという。
町には、地方公共団体が空き家登録を募り利用を希望する人に物件情報を提供する「空き家バンク」制度があるが、6年間の登録数は18軒と低迷。一方で町内の空き家バンク利用希望者は6年間で約90組おり、住宅供給数が不足している。
確認が取れた所有者の中には「修繕費用がかかり過ぎるため現状維持するしかない」「固定資産税を払っている場所自体がよく分からない」として、貸し出すことを望まない人が1~3割いた。このほか「解体費用が知りたい」「さら地にしたときの固定資産税が知りたい」など、売却や賃貸に前向きな人も1~2割いたという。空き家バンク制度を知らない人も多く、所有者と連絡が取れないケースも2割ほどあった。
龍郷集落(112世帯)では空き家が13軒あり、軽微な補修で住めそうな空き家は4割、相当な補修が必要な空き家が6割。同法人によると、空き家のリフォームには最低でも500万円程度はかかる。また移住希望者が下見をする際、廃虚に近い空き家を見て断念するケースもあることから、比較的安価で、洗練されたデザインの規格住宅を新築する方法も提案している。
規格住宅は、ハウスメーカーなどがあらかじめ間取りや内装などを決めているモデルハウスを選んで新築するもので、短期間で建てられるのがメリット。
今回新築した住宅の間取りは、玄関リビング(3畳)とダイニングキッチン(4・1畳)、寝室(同)、トイレ・浴室(3・3畳)の4部屋。主に単身者やカップル向けに設計されている。施工費用は1棟約830万円で施工期間は約2カ月。2泊以上する人が対象で、利用には会員登録が必要。会員料金で1泊6千円(1人)。12月1日宿泊分から予約を受け付ける。
佐藤代表は「ゲストハウスとして実際に利用することで、規格住宅や集落の住み心地を『お試し』してもらい、移住する際の参考にしてほしい」と話している。
同ゲストハウスに関する問合せは電話070(6656)0278NPO法人ねりやかなや。