繁華街、苦境越え徐々に活気 週末の名瀬屋仁川、満席店も
2021年04月05日
地域
200店舗以上が軒を連ね、今年で生誕111年目を迎える奄美群島一の繁華街・屋仁川(通称・やんご)。昨年から、多くの飲食店が新型コロナウイルスに翻弄(ほんろう)されてきた。屋仁川が活気を失えば小売店や奄美黒糖焼酎メーカー、タクシー、運転代行業など多業種に影響が及ぶ。屋仁川の人出は景気のバロメーターでもある。新年度がスタートして最初の週末を迎えた屋仁川を歩いた。 (向慎吾)
土曜日の3日午後8時、屋仁川通りのやんごゲート近くでは店を探す2、3人のグループの姿が目立った。観光客と思われる人もちらほら。例年であれば歓迎会でにぎわう時期だが、大勢で出歩く人の姿はあまり見られない。ほとんどの飲食店が換気のためにドアを開け、店内からにぎやかな声が聞こえてきた。最初に訪れた居酒屋は満席で入れず、次に向かった店は団体客で貸し切りだった。3軒目でようやく席を確保できたが、ほぼ満席状態だった。島内でのコロナ感染者確認や県の要請による営業時間短縮、外出自粛などの影響で遠のいていた客足は戻りつつあるようだ。
午後11時すぎ、屋仁川通りをタクシーが連なって走っていた。運転代行の車両も数台確認できた。代行業の50代男性は「3月中旬ごろから少しずつだが屋仁川に人が戻ってきている。ありがたいことだが、コロナ感染者が島で一人でも出たらまた静かな屋仁川に逆戻りするだろう。なんとか出ないことを祈るだけだ」と話していた。
路上では店を出た若者たちが立ち話をしていた。マスクを着けていない人が複数いた。マスクを顎にずらした状態で大声で話しながら歩く中年男性も見掛けた。酒が入ると気が緩みがちだ。「ありがとう。また来てね」。スナックやラウンジなど複数の飲食店が入るビルの下では、女性従業員が手を振って笑顔で男性客を見送っていた。老舗スナックからは昭和の歌謡曲のカラオケが漏れて聞こえてきた。コロナ前の日常には戻れないが、屋仁川は苦境を乗り越えようと一歩一歩着実に前に進んでいる。
緊急事態宣言解除後、都市部を中心に感染再拡大の動きが加速し、地方も警戒を強めている。「離島地域は、本土地域と比べて医療体制が極めて脆弱(ぜいじゃく)であり、また高齢者も多く、一度感染が拡大した場合、医療崩壊につながりかねない」。行政などが繰り返し発信してきたメッセージだ。自分のため、大切な人のために、手洗いやせきエチケットの徹底、3密の回避といった感染対策意識をいま一度、一人一人が高める必要がある。