高千穂神社の桜治療へ 樹木医が樹齢90年老木診断 奄美市名瀬
2025年02月24日
地域

高千穂神社の老いた桜を診断した樹木医の後藤瑞穂さん(右)=23日、奄美市名瀬
奄美市名瀬の高千穂神社(當郷裕之宮司)の境内に植えられている老いた桜の木の診断と初期治療が23日、同神社で行われた。植樹後90年の桜の木は腐敗や空洞化が進んでおり、東京を拠点に活動する樹木医の後藤瑞穂さん(56)が桜の外観や周辺環境を観察。地面が砂利で踏み固められ、根が酸素を求めて地表に上がる根上がりが起きていることなどを指摘し、栄養や水分、酸素の源である土壌環境の改善を求めた。

たくさんの花が咲いていた頃の写真を見せる高千穂神社の當郷裕之宮司=23日、奄美市名瀬
桜は境内の車のはらい場の脇にあり、當郷宮司(57)によると、神社が1935年に県社に昇格したことを記念して植樹された。當郷宮司が神社に来た2003年にはすでに一部が腐っており、10年ほど前には朽ちた幹を切断した。境内にはこの木を親とした2世樹木も多く植えられている。種はツクシヤマザクラ。
後藤さんが代表を務める木風(こふう)(東京都)は、瀬戸内町から町指定天然記念物「デイゴ並木」(諸鈍)の樹勢回復事業を受託している。奄美で協力する中山造園の中山和紀取締役(35)に、取り組みを知った當郷宮司が相談し、後藤さんが来島するタイミングに合わせて実施した。後藤さんの祖母は与論町で、医師として働いていた時期があったという。
後藤さんは診断で、木の外傷や腐り具合、空洞箇所、根の張り方、土壌、日当たりなどを観察。木の周辺は砂利が敷かれ、車によって地面が踏み固められて栄養や水分、酸素を摂取する根が伸びきれない状態になっていることなどに触れながら「木の状態は10段階でいうと、悪い方に7~8のレベル。主幹が廃れ、倒れたり割れたりする可能性もある」と指摘。砂利を取り除き、木の周辺に車が入らないように土壌を整えることなどを提案した。より詳しく調べるためには、樹木内部の状態を専用装置で確認する必要があるという。
最後は診断の見学に訪れた子どもたちも参加して、木風が開発した竹筒型の土壌改良剤を木の周辺に六つ埋めた。
當郷宮司は「専門的な診断は初めてで、土の環境など今後の注意の指針や目指すところが分かった。根元を保護して、少しでも多くの枝が伸び、たくさんの花が咲くようにしたい」と語った。