「ストーリー伝える観光を」 集落×人×観光シンポ 地域活性化に向け意見交換 奄美市名瀬

2023年03月14日

地域

観光と地域振興について活発に意見が交わされたシンポジウム=12日、県立奄美図書館

集落の維持や地域活性化について考える「集落×人×観光シンポジウムin奄美大島」(鹿児島県主催)が12日、奄美市名瀬の県立奄美図書館であった。各地で観光や地域振興に取り組む4人が登壇し、集落での合意形成の進め方や収益性向上の工夫などについて討議。「自然環境に育まれた文化やその土地ならではのストーリーを伝えることが大切」「観光地をつくるのではなく、集落の強みや個性を次世代へつなぐという意識が必要だ」など活発に意見を交わした。

 

オンライン視聴も含め、100人超が参加した。沖縄県国頭村で民家を改修した宿泊施設などを展開する「ENDEMIC GARDEN H」代表取締役の仲本いつ美さんが基調講演し、地域の文化体験を組み込んだ同社のツアー内容を紹介。「世界自然遺産登録で観光では自然体験が主流になっているが、民話や伝統文化、人と自然の関わりといった環境文化的な視点も重要だ」などと指摘した。

 

シンポジウムは奄美群島環境文化総合研究所の小池利佳代表をコーディネーターに、仲本さんと一般社団法人巡めぐる恵めぐる代表理事の新元一文さん、一般社団法人E’more(いもーれ)秋名代表理事の村上裕希さん、一般社団法人金見あまちゃんクラブ代表理事の元田浩三さんが意見交換した。

 

地域振興に向けた組織運営について、組織立ち上げまでに地域住民との話し合いを何度も重ねたという村上さんは、「周りの人を巻き込み、関わってもらうようにしている」と語った。住民と共に食堂や観光案内などを展開する元田さんも「地元住民に加わってもらうことで環境保全への意識も高まる。地元への伝え方が課題だ」と述べた。

 

集落維持と地域振興に関して、島唄を軸に地域文化や歴史を伝える活動などに取り組んでいる新元さんは「たくさんの人を呼び込もうとせず、集落ならではの文化や強みを伝えていくことが観光振興と次世代への継承につながる」と話した。

 

会場からは「移住希望者やビジネスをしようという人が集落に入り込みにくい空気がある」「奄美の伝統建築物高倉のように、人が集まって語り合えるような機能を持った場所が必要ではないか」などの意見があった。