「一番つらいのは女性」 学校講演続ける産科医 命と性について

2021年08月12日

地域

「心臓は、赤ちゃん(胎児)が米粒大のときに動き出す」。生徒たちに米粒を配り、命の重みを伝える小田切医師=7月16日、奄美市名瀬の金久中学校

 「妊娠や性の問題が起きたとき、一番つらい思いをするのはいつも女性」。名瀬徳洲会病院産婦人科の小田切幸平医師(48)は、同院に着任した2008年以来、奄美大島各地の学校で講演を続けている。主なテーマは、母親の胎内に授かる命と、その生育や誕生に関わる性の問題。社会全体で考えてもらいたい現状があるという。

(西谷卓巳)

 

■1人悩み、壊れる心身

 

 7月16日、奄美市名瀬の金久中学校(窪田智司校長、生徒318人)で健康教室があり、小田切医師が講師を務めた。生徒の反応に応じてクイズなど工夫や軽い冗談も交え、親しみやすく語り掛けた。

 妊娠、出産に伴う心身の変化や性感染症、日々の生理現象など幅広く解説した。「産婦人科を受診しないまま、妊娠を1人で抱え込めば心身を壊しかねない。望まない妊娠は、母子の命を脅かしうる問題。男性側の自覚も欠かせない」。

 さらに産科医療を描いたドラマを一部引用し、心肺停止した母体の救命を図る緊急手術・死戦期帝王切開を紹介。「みんなの命は、生まれる前から多くの人に支えられている。それは当たり前のことじゃない」。小田切医師は重く、温かい言葉を生徒に贈った。

 聴講した2年の前山天海さんは「妊娠や出産の大変さを感じた。命あることに感謝し、人を思う心を大切にしたい」と語った。

 

■10代妊娠「奄美多い」

 

 「避妊の方法だけでなく、中高生には自ら心身を守る重要性を分かってほしい」。後日、小田切医師から届いたメールに、講演を続ける意図がつづられていた。

 静岡県出身の小田切医師は高校時代、弟の白血病を機に医者を目指した。医大へ進学後、弟は他界。失意の中の旅先で、妊産婦が命を落とす異国の現状を知り、産科医となった。現在は同院唯一の産婦人科医。

 「奄美は10代の妊娠や出産、性感染症が本土より多い印象。性活動に代わる娯楽が少なく、顔見知りの多い地域特性も無関係ではない。性の悩みは身近でありつつ、繊細な問題。望まない妊娠や性感染症が疑われても、受診したくない心情はあると思う」。

 小田切医師によると、中高生を含む10代の妊娠は、中絶を繰り返したり、男性側が認知しないまま母親1人で出産、育児に臨むケースも少なくない。担当した最年少の妊婦は当時小学6年生。発覚時点で中絶可能な週数を越えていた。

 「問題を当事者だけに抱え込ませないことが大切。対症的な処置や情報提供は医療側(病院など)でできるが、精神面や生活環境などの把握は難しい。家庭や学校などと連携し、すべての若者にとって相談しやすい環境を整えたい」。

 

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 奄美群島内で出産できる病院は奄美大島と徳之島、沖永良部島の3島計4院。うち3院は産科医が1人しかいない。金久中の講演後、小田切医師は緊急の手術が入り、足早に会場を去った。