サンゴ守る雨庭づくり体験 シマの暮らしとの関わりも学ぶ 龍郷町

2025年04月13日

地域

約20人が参加した雨庭造り=12日、龍郷町

公益財団法人日本自然保護協会(東京都)主催の「今日からできる!サンゴを守るお庭づくり」が12日、龍郷町であった。午前の講演会(登壇者3人)と午後の実践編の2部制で、参加者らはシマ(集落)の暮らしと密接に関わってきたサンゴの文化的な側面を学ぶとともに、雨水を地下に浸透させ土壌の流出を防ぐ効果のある雨庭(レインガーデン)造りを通じて、身近でできる環境保全活動に慣れ親しんだ。

 

同町手広地区振興センターであった講演会には約30人が来場。講演で元奄美博物館長の久伸博さん(64)は、奄美でサンゴが石垣や墓、祭事、漁、調理器具などさまざまな用途で使われてきたことを紹介。近世奄美の生活を記録した「南島雑話」に、黒糖作りにおいてサンゴ(ウル)が使われ、圧搾したサトウキビの煮汁を凝固する石灰(白灰)にするための焼き加減や時間などが記載されていることも伝えた。

 

その上で久さんは「世界自然遺産として希少種や固有種が注目されるが、(その前の国立公園指定時に評価され)根底にある環境文化をもう一度見詰め直してもいいのではないか」と呼び掛けた。

 

約30人がサンゴとシマ(集落)の暮らしとの関わりなどを学んだ講演会=12日、龍郷町

続いて登壇した同協会の中野恵さん(49)は陸から直接海に流れる土砂や赤土がサンゴを弱らせることを説明した上で、地下から湧き出る水が海の環境を整えていることなどを奄美での写真も交えて説明した。

 

同町の個人宅の庭であった午後の雨庭造りには約20人が参加。講演者の1人でランドスケープデザイン(造園設計)を手掛けるハビタ(神奈川県)の滝澤恭平代表取締役(49)が講師となり、雨庭など自然の機能を生かした治水や土地利用の活動を全国で推進する法貴弥貴さん(42)がサポートした。

 

参加者らは庭の敷地内に雨水の誘導、遊水、地下への浸透、せき止めの区画を整備。硬い地面をバールやツルハシで砕きスコップで土を掘り返して遊水池を作り、そこに地下へ雨水を浸透させる縦穴を掘って落ち葉や石を敷き詰めたり、雨水の誘導のために木の枝を地面に埋め込んだりした。

 

午前、午後の部両方に参加した龍郷町の女性(50代)は「子どもの頃から海遊びが好きで、年々環境の変化を感じている。落ち葉や石など身近なもので環境保全のためにできることがあると学んだ。自宅で実践したい」と語った。