群島内外の視点から読み解く リーダー2氏を再顕彰 復帰運動に学ぶシンポジウム 奄美市

2023年11月24日

地域

リーダー2氏を再顕彰し、群島内外の視点から奄美の復帰を読み解いたシンポジウム=23日、奄美市名瀬

奄美群島日本復帰70周年記念「復帰運動に学ぶシンポジウム」が23日、奄美市名瀬のアマホームPLAZA(市民交流センター)であった。昇曙夢先生を偲(しの)ぶ会(喜入昭会長)と泉芳朗先生を偲ぶ会(楠田哲久会長)の共催。復帰運動を地元でけん引した泉芳朗と、東京を中心とする本土のリーダー昇曙夢の人物像と功績を再顕彰し、奄美の復帰を群島内外の視点から読み解いた。

 

リーダー2氏の苦悩を追体験するとともに、復帰運動の学びを今後の奄美の発展に生かすことが目的。昇の命日(22日)に合わせて開き、約100人が訪れた。

 

パネリストは、元拓殖大学教授の叶芳和氏(80)、山形大学人文社会科学部の天野尚樹教授(49)、元瀬戸内町立図書館・郷土館長の澤佳男氏(75)。

 

冒頭、復帰当時の奄美の様子を記録したNHKのニュース映画「復帰の喜びにわく奄美群島」が上映され、続いてパネリストらが基調講演した。

 

叶氏は、地元に先んじて本土の奄美出身者らが復帰を求め立ち上がったことから「復帰運動は内地から始まった」とし、「全国奄美連合総本部の委員長を務めた昇が、出身者らの団結を促して国民運動へと導いた」と評価。「本土の組織と泉率いる地元の組織が別々に活動しながら、互いに連携して復帰を成し遂げた」と述べた。

 

天野教授は、当初、奄美以外の地域を含む全面復帰を掲げていた泉が、本土の復帰運動との関わりの中で、奄美に限定した復帰を目指す方針に転換を余儀なくされた状況があったと指摘。奄美返還に伴う政治的利益を重視した米国側の思惑にも触れ、「奄美や名瀬だけでは見えてこない側面が復帰運動にはまだある」と述べ、広い視野で復帰を理解する必要性を説いた。

 

澤氏は、昇のロシア文学者としての顔に注目。20代から翻訳家として頭角を表し、ロシア文学の第一人者として活躍したことから「ロシア文学が盛んだった当時は昇の時代。日本文学界への影響力も大きかった」と功績をたたえた。

 

パネルディスカッションでは、本土と地元の復帰運動の捉え方や、復帰運動の教訓を基に今後の奄美の在り方について討論。会場からは「島の中だけではなく、島外や世界の情勢とも照らし合わせながら復帰の歴史を学んでいくことが大切なのでは」などの意見が上がった。

最後は全員で「日本復帰の歌」を斉唱し、シンポジウムを締めくくった。