観光客増へ期待の声 全国旅行支援再開 内容変更に戸惑い、感染不安も

2023年01月15日

地域

週末の夕方、人々や車が行き交う名瀬市街地の繁華街付近=14日、奄美市

昨秋始まった国の観光促進事業「全国旅行支援」が10日、年末年始の一時中断を経て再開した。再開前より支援内容は縮小されているが、奄美の観光関連業者らは予約や問い合わせが増えているとして、さらなる来島者増を期待。一方で飲食や買い物に使えるクーポンの利用方法変更への戸惑いや、新型コロナウイルスとインフルエンザの同時流行などに対する不安の声も聞かれる。(西谷卓巳)

 

■割引縮小、一部変更も

 

全国旅行支援は昨年10月に開始。繁忙期の年末年始に一時中断した。再開後は今月10日~3月末(4月1日チェックアウト含む)の旅行商品が対象。目的地となる都道府県ごとに行い、国から割り当てられた予算がなくなり次第終了する。

 

鹿児島県は「今こそ鹿児島の旅 第4弾」として実施。旅行代金の最大割引率は再開前の40%から20%に引き下げた。1人1泊当たりの割引上限額は交通・宿泊セット5千円(目的地が離島の場合8千円)、宿泊のみ3千円(同5千円)。日帰りは1人1回当たり県内一律3千円となる。

 

クーポン券は平日2千円、休日千円分。専用のQRコードが印刷された台紙クーポンを宿泊施設などが配布し、利用者がスマートフォンで読み取って電子クーポンとして利用する。

 

支援再開に伴い、電子クーポンでの利用を原則とするよう方法が変わったが、スマートフォンを持たない人に対応するよう、台紙のまま使用できる店舗もある。

 

■観光好調、地元で実感

 

県の観光動向調査によると、旅行支援が始まった昨年10月以降、奄美地区主要12施設の宿泊者数は10月3万90人(コロナ禍以前の19年同月比18・3%増)、11月2万9128人(同12・8%増)と好調を維持している。

 

奄美市名瀬の宿泊施設などからは来島者増の効果を実感する声が聞かれ、奄美ポートタワーホテルでは「団体・個人利用ともにかなり増えた。昨秋と比べれば落ち着いているが、今年1・2月も前年同期比2割増の予約が入っている」という。

 

近くにホテルが立ち並ぶ繁華街・屋仁川の飲食店にも効果は波及。居酒屋に務める女性は「昨秋から(旅行支援の)クーポン券を使えるか聞かれることが増えたので、今年から使えるよう登録した。まだ正月の連休明けで客足は鈍いが、期待はしている」とした。

 

■心境複雑、活性化切望

 

地域経済への波及効果が期待される一方、クーポンの利用方法が変更となり困惑する店舗も少なくない。中心商店街の店舗からは「電子クーポン以外の利用方法があることを知らなかった」「機材の関係上、電子対応しかできず、客側の負担を増やしてしまう」などの声も聞かれた。

 

新型コロナとインフルエンザが同時流行する現状を不安視する声もある。市内で営業するホテルの担当者は「集客への期待と感染の不安が交錯している。客室清掃など感染リスクを伴う場面もあるが、できる対策を尽くすしかない」とした。

 

国は経済活性化のため観光需要回復を重要視し、感染症対策を徹底した上での旅行を呼び掛けている。商店街、繁華街各店も「感染回避で閑散とした街に戻りたくない」「ウィズコロナで良い」など一層の地域活性化を切望している。