避難所運営に関する研修会 宇検村

2020年09月11日

地域

宇検村内の避難所の運営について議論を交わす村民たち=9日、宇検村湯湾の元気の出る館

宇検村内の避難所の運営について議論を交わす村民たち=9日、宇検村湯湾の元気の出る館

 過去最大クラスと警戒された台風10号が過ぎ、宇検村では9日、防災科学を専門とする鹿児島大の岩船昌起教授を招いて避難所運営に関する研修会を開いた。県防災アドバイザーも務める岩船教授は東北出身で、東日本大震災の経験や研究から、「災害時、人はパニックになりやすい。普段から区長同士が連携し、避難ルートや避難所の動線を決めておく必要がある」とアドバイスした。

 

 台風10号が最接近した6日、宇検村は21カ所の避難所を開設し、20カ所に最大365人(219世帯)が身を寄せた。新型コロナウイルスの感染予防策として「元気の出る館」を発熱者専用避難所としたが、利用者ははいなかった。

 

 9日、湯湾生活会館で開かれた研修会で岩船教授は、各集落ごとの住民数と消防団員数を地図で表示。崖崩れなどにより集落が孤立化しやすいため、集落ごとに避難所が運営できるよう、消防団や青壮年団などでつくる自主防災組織が重要になることを指摘した。

 

 また今回の台風10号は中心進路から逸れ、勢力がまだ弱く「運が良かった」と解説。いざというときの避難には、人口の少ない集落は隣の集落に全員避難するなど事前に集落間で話し合っておく必要性を訴えた。

 

 元気の出る館にも移動し、避難所の配置図を示し、実際の動線をシミュレーションするワークショップを実施。「公民館が狭い」「トイレが遠い」「エアコンがない」「畳もマットレスもない」などの課題が次々浮上。白熱した議論が飛び交った。

 

 参加した自主防災組織の男性は「自分の家がいいと言い張る高齢者が多く、説得するのに時間がかかり、避難させられなかった。どうすればいいのか」と質問。岩船教授は「それで実際、東日本大震災では多くの人が亡くなった。自分の命は自分のもの。組織としては時間で説得を諦めざるを得ない場合もある」と話した。宇検村の実態について「地域の結束力が強く、顔が見える関係にあるというのは防災のベース。災害の前に決めておかねばならないことは多く、一緒に取り組んでいきたい」と話している。