53歳クロウサギ像輝き再び 学校の宝、かつて飼育 大和小

2023年12月16日

地域

アマミノクロウサギ像に朱色の目を入れる児童=15日、大和村

国の特別天然記念物アマミノクロウサギをかつて飼育していた大和村思勝の大和小学校(新村篤校長、児童27人)は、飼育から60年の節目に当たり旧正門にあったアマミノクロウサギ像を、児童の登下校を見守る事務室前に移設した。「ミニミニわくわく博物館」として、飼育の歩みや当時の様子を伝える展示コーナーも併設。除幕式が15日、同校であり、6年の児童4人が色が薄くなったクロウサギ像に朱色の目を入れ、輝きを新たにした。

 

アマミノクロウサギの新しい飼育小屋完成時の様子(1969年、大和小保管写真)

アマミノクロウサギは奄美大島と徳之島にだけ生息する固有種。大和小(当時大和小中)はアマミノクロウサギが国の特別天然記念物に指定された1963年から90年までの27年間、国の許可を得て保護飼育していた。67年の全国鳥獣保護実績発表大会での受賞や、68年に上皇ご夫妻(当時皇太子ご夫妻)が来島された際に、飼育していた2匹を県大島支庁で展示したこともある。

 

70年の卒業記念で像を制作。校舎建て替えなどで旧正門に置かれていたが、校長室に保管されていた飼育記録などを読んだ新村校長が、その功績を語り継ぐ目的で移設を企画。奄美群島広域事務組合の「宝をつなぐチャレンジ応援事業」に応募し実現した。

 

除幕式には、同校卒業生で当時を知る伊集院幼村長(62)と晨原弘久教育長(66)も出席。クロウサギ当番だった伊集院村長は「家から餌を持って行った。先生とクロウサギがふんをするところを観察した」などと懐古。

 

70年の卒業生で像の設計図を書いた晨原教育長は3年前の同校卒業式後にこっそりとビールをかけて像の50歳を祝ったといい「あと47年で100歳。覚えていたら祝ってほしい」と児童に呼び掛けた。

 

児童代表で6年の直島彩音伽(しゅりか)さん(11)は「資料を通して飼育など先輩方の取り組みを知れた。歴史を大切にしたい。自然と環境に目を向けて過ごしたい」と述べた。

 

ほかの児童らも加わりテープカットや像の除幕を行い、6年生4人で像に目を入れた。太純一PTA会長(51)から児童に記念リーフレットも贈られた。

 

新村校長によると、飼育には当時の竹田利秀校長の「大和の子のよりどころとなり、自信を持ってほしい」との思いがあったといい、「子どもたちが、宝であるアマミノクロウサギを守る気持ちを持ち、たくましく育ってほしい」と話した。

 

思勝集落には、環境省の奄美野生生物保護センターが設置され、クロウサギの生息分布確認調査や交通事故被害防止の啓発などを行っている。同村は事故などで傷付いた個体を保護・治療し野生に戻し、研究者の活動拠点としても位置付ける「アマミノクロウサギ研究飼育施設(仮称)」を整備中。25年4月の開館を目指している。