IUCNに要望書提出 嘉徳護岸

2019年09月19日

地域

IUCNへの要望書提出を報告する和田知彦弁護士(右)ら=18日、大島支庁記者クラブ

IUCNへの要望書提出を報告する和田知彦弁護士(右)ら=18日、大島支庁記者クラブ

 県が瀬戸内町の嘉徳海岸浸食対策として計画している護岸工事に関して、工事への公金支出差し止めを求める住民訴訟を起こしている原告弁護団は18日、世界自然遺産登録候補地の現地調査を行う国際自然保護連合(IUCN)に要望書を提出したと発表した。IUCNから日本政府に対し、工事を中止するよう是正勧告を出すことを求めている。

 

 弁護団の和田知彦氏が奄美市の県大島支庁記者クラブで記者会見した。原告の1人、松本晋平氏(43)=瀬戸内町=と、同訴訟に協力するプロサーファーの碇山勇生氏(34)=奄美市笠利町=が同席した。

 

 要望書では、嘉徳川流域に残る生態系の価値を強調。嘉徳川、嘉徳海岸と周辺地域は世界自然遺産推薦地と連続しており、少なくともバッファーゾーン(遺産を保護するためにその周囲に設けられる利用制限区域)に設定しない限りは、登録の条件となる十分な規模と必要な要素を持っている「完全性」、保護管理体制を満たさず、「世界自然遺産として登録すべきではない」と訴えている。

 

 さらに、10月に行われる現地調査で嘉徳海岸の調査を求め、「嘉徳浜が有するかけがえのない自然や生態系が破壊されるという重大な事実を十分に理解していただいた上で、日本政府に対し、護岸建設工事を中止するよう是正勧告を行うことを強く求める」としている。

 

 要望書は13日、同弁護団が所属する一般社団法人JELF(日本環境法律家連盟)名でIUCNの世界遺産プログラム宛てにメールで送付した。和田氏は「今後もさらに情報を提供して、嘉徳がなぜ重要な場所なのかを伝えていきたい。世界自然遺産登録への機運が高まる中でこのような工事をしていいのか。奄美の未来の姿を問う時期は今をおいてほかにない」と力を込めた。