「5類」移行から1カ月 観光に明るい兆しも 感染対策は継続を 新型コロナ
2023年06月09日
社会・経済
新型コロナウイルス感染症の感染法上の位置付けが季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行してから、8日で1カ月が経過した。感染症対策や行動制限で長く苦境に立たされた観光業界からは、客足の回復を喜ぶ声が上がっている。一方、県内医療機関の定点報告によると、5類移行後感染者数はじわじわ増加。奄美の医療関係者らも「脅威が去ったわけではない。マスクや手洗いといった基本的な感染対策を続けるべきだ」と注意を呼び掛けている。
カヌー体験が観光客に人気の奄美市住用町の「黒潮の森マングローブパーク」。稲元義人管理課長は「梅雨入りや台風の影響で利用者が少ない日もあったが、コロナ前に戻ってきている。今まで(行動が)抑えられていた分、旅行するようになったのでは」と、来場者の回復へ手応えを示す。
奄美市名瀬のホテルでは、新型コロナの影響で一時期売り上げが4割ほど落ち込んだが、5類移行後は夏にかけてほぼ満室に近い状況という。支配人は「感染対策として従業員のマスク着用は継続し、宿泊客の検温や手指消毒などの協力を求めていく」と話した。
新型コロナの5類移行後はインフルエンザなどと同じく、感染症の流行動向の指標となる週ごとの定点発表での発表に変更。鹿児島県内でも、県指定の医療機関からの届け出に基づき、指定病院当たりの報告数値を発表している。
移行後の名瀬保健所管内と徳之島保健所管内の発表状況をみると、2023年第19週(5月8~14日)は名瀬管内0、徳之島管内で定点当たり2.4(報告数12件)。第20週(15~21日)は名瀬2(同10件)、徳之島6.2(同31件)。第21週(22~28日)は名瀬2.2(同11件)、徳之島10.4(同52件)と推移しており、徐々に増加。
5類感染症は法律上、緊急事態宣言などの社会全体への活動抑制や、感染者の隔離、濃厚接触者の外出自粛要請は行われない。加えて、インフルエンザの場合は国の基準で定点当たりの報告数が10以上で注意報、30以上で警報を発令するが、コロナは現段階では国の指標がない。
大島郡医師会の稲源一郎会長は「以前のように新聞やテレビで毎日感染者数を目にすることがなくなったからか、油断している人が増えている」と指摘。
「発熱外来で来院した患者のコロナ陽性率が上がってきており、体感として奄美市内でも感染が広がっている実感がある。高齢者など重症化リスクの高い人を守るためにも、医療機関や人が集まる場所では今後もマスクの着用を続けてほしい」と話した。