奄美大島から沖縄へ初搬送 離島で医療用航空機準救急 「活動知って支援を」 メッシュ・サポート
2025年02月04日
社会・経済

沖縄への準救急搬送のため奄美空港に着陸したメッシュ・サポートの小型機=3日、奄美市笠利町
沖縄県や奄美群島の離島地域で医療用航空機を活用した医療支援活動に取り組む沖縄県のNPO法人メッシュ・サポート(塚本裕樹理事長)は3日、初めて奄美大島から沖縄本島への準救急搬送を行った。多発外傷で専門的な治療が必要な70代の女性患者を沖縄の医療機関へ送り届けた。活動資金は法人への寄付金で賄い、搬送は無償。利用者は「活動を知ってもらい、支援につなげたい」と話す。
同法人は2007年から医療用ヘリ、15年から医療用小型飛行機の運用を始めた。琉球諸島全域を対象に、身体的都合で旅客機やフェリーでの帰島が困難な患者の「帰島搬送」や、公的救急搬送手段の適用外となる患者の「準救急搬送」などを行っている。
小型機での搬送実績(25年2月3日現在)は114件。奄美関係の搬送件数は、沖永良部島48件、与論島18件、徳之島6件、奄美大島4件。今回は県立大島病院の要請で、奄美市笠利町の里牧子さん(72)を沖縄リハビリテーションセンターへ搬送した。
里さんは昨年10月、笠利町内で交通事故に遭い、意識不明の重体で病院に搬送された。一命はとりとめたが、リハビリ専門の病院へ転院を勧められた。家族は長女一家が暮らす沖縄本島で転院先を見つけ、メッシュ・サポートの利用を病院側へ願い出た。
里さんは3日、介護タクシーで駐機場に乗り着け、ストレッチャーに乗った状態で搭乗。所要時間は奄美空港から那覇空港まで約1時間半、那覇空港から病院まで同法人の搬送車両で約1時間だった。
奄美空港まで付き添い、離陸まで見守った長男の建一郎さん(43)と次男の博嗣さん(38)は「安心して送り出すことができた。民間機は沖縄までの直行便がなく、旅費も高額。これを機に奄美でも(メッシュ・サポートの)利用者が増えて、医療の幅が広がっていけば」と話した。
同法人のニーズは高い一方、過去には財源不足で運航を休止したこともある。塚本理事長(49)は「海を挟んでいるだけで、本土と比較して制限を受けている離島の実情に対し、何かできることはないかと事業を始めた。(島外への転院や帰島を)諦めるのではなく、できることを知ってもらい、その活動を皆さんに支えていただけたら」と支援を求めた。
今回搬送を依頼した里さんの長女ジョージ絵利奈さん(40)は「事故前はとても元気だった母。良い医療体制で少しでも前の状態に近づけたい。家族の経済的負担や患者の体の負担を考えると、メッシュ・サポートはありがたい存在。今後、似たような境遇に置かれる人がいたときのために経験をシェアしたい。島の人にもメッシュの活動を知ってほしい。そして支援につながれば」と語った。
メッシュ・サポートの支援方法は公式ホームページmeshsupport.jpへ。