開業10年超、赤字運営続く 課題山積、解消見通せず 奄美大島選果場

2024年05月10日

社会・経済 

持ち込み量が伸び悩んでいる奄美大島選果場。2013年の開業から受け入れ目標未達が続いている=2月16日、奄美市名瀬

奄美かんきつのエースに位置付けられる「タンカン」。今年2~3月に収穫された2024年産は裏年で、奄美大島選果場(奄美市名瀬)に選果のため持ち込まれた量は前期比約20トン減の約250トン。選果場が13年の開設時に掲げた受け入れ目標の450トンには遠く、施設の赤字運営が続いている。島内5市町村が歩調を合わせて実施している選果料助成で委託選果分は年々増加し、取り扱い総量を底支えしているが、施設の安定運営への根本的な課題解決は見通せないまま。26年産以降の選果料助成についても、継続の可否は多くの自治体で未定のままだ。

 

◆低迷する選果場利用

 

奄美大島選果場は、選果基準の統一化による出荷品質の安定を目的に整備。光センサーを活用して糖度や酸度などを計測し、腐敗果の有無も判定している。

 

県大島支庁が毎年度発行する「奄美群島の概況」によると、奄美大島での近年のタンカン生産量の最多は16年度の1494トン。選果場の受け入れ目標はその4分の1だが、一度も達成していない。

 

タンカンの選果実績が最も多かったのは、県統計で最多だった16年度実績が該当する17年産の289・8トン。生産量に対する選果場利用率は約2割。以降も2~3割で推移し、24年産は県の島内生産見込み量約800トンに対し、246・9トンで3割程度だった。持ち込まれなかった果実の大半は、名瀬中央青果や個別販売を通して出荷されたとみられる。

 

今年2月に宇検村であったタンカンはさみ入れ式で県大島支庁農政普及課の川越尚樹課長(当時)は「産地として日本一のポテンシャルがある奄美大島のタンカンが、いつまでも品質にばらつきがあるというのはもったいない」と指摘。ブランド産地確立へ選果場の活用を訴えた当初の状況から抜け出せていない。

 

◆経営維持へ支援と罰則

 

5市町村は選果場の利用促進を図ろうと、22年産(宇検村は21年産)から選果手数料を助成している。対象は「良品」以上で、金額はキロ当たり26円。22年産と23年産の場合、助成額が選果料相当で、良品以上は生産者負担が実質ゼロとなった。

 

大和、宇検の両村は24年産から、助成額をキロ56円へ増額。ほかの自治体も委託選果出荷者に対する協力金、集荷場までの運賃などを支援し、選果場利用を後押ししている。

 

一方、選果場の運営実情は厳しいままだ。選果手数料の低迷に加え、人件費や光熱費の上昇、機材メンテナンスなどの負担が続き赤字が慢性化。さらに5市町村の選果料助成が終了した場合、さらにダメージが重なる。それらもにらみ、JAあまみ大島事業本部果樹部会は24年産タンカンの選果料をキロ当たり30円引き上げ、引き上げ分の約6割を選果場運営費に、残りを市町村助成終了に備えた積み立てに回した。

 

課題は他にもある。JAは毎年12月の数量申し込みに基づき共販戦略を立てるが、収穫期には申告通りに出荷しない生産者もいる。24年産の共販実績は事前連絡なしのキャンセルなどが影響し、出荷計画比で約8トン減。JAは大規模農家を頼り、不足分を穴埋めした。

 

こうした事例に対し、罰則を求める声も。果樹部会が4月に奄美市で開いた出荷販売反省会では「出荷計画を守らない状況を放置しておくわけにはいかない」とし、25年産に向け罰則規定を設ける方針を確認。今後罰則案を協議し、8月の部会総会に諮る。

 

奄美大島選果場は来期で稼働12年目。26年産以降の選果料助成については5市町村の担当者やJAなどで協議していくというが、選果場を将来にどうつなげていくか、大きな分岐点となりそうだ。