ウニ漁解禁、水揚げゼロ 「全面禁漁を」の声も 奄美群島

2019年07月07日

社会・経済 

今年もウニ漁に出る人の姿が見られない海辺=4日、龍郷町安木屋場

今年もウニ漁に出る人の姿が見られない海辺=4日、龍郷町安木屋場

 奄美群島で1日、シラヒゲウニ漁が解禁された。しかし、漁業者らによると2017、18年に続き今年もまったくの不漁となっている。4日までに奄美市の名瀬漁業協同組合と奄美漁協(本所・同市笠利町)に水揚げされたウニはゼロ。資源回復のために各地で稚ウニの放流や藻場再生などの取り組みが行われているが、関係者からは「数年間は全面禁漁にすべきでは」という声も上がっている。

 シラヒゲウニは濃厚な甘みが特徴で、夏の味覚として島民に親しまれてきた。数年前まで解禁日には奄美大島北部の海岸を中心に浜辺でウニの殻を割る姿が見られたが、水揚げ量が激減した17年からはその風景もほとんど見られなくなった。

 名瀬漁協によると、15年まで年間千キロ台で推移していた水揚げ量は16年に508キロ(前年比1029キロ減)、17年3キロと急激に落ち込み、18年はゼロ。奄美漁協も14年に2合瓶で158本だったのが、15年は5本、16年以降は0本となっている。

 名瀬漁協は「ウニの主な餌である海藻の減少と、過剰漁獲の影響が大きいのでは」と分析。「安定して採れるようになるまでは全面禁漁も必要との意見も出ている。県や他の地域の動向も見て考えたい」とした。

 資源の回復に向け、群島各地では魚介類の餌場や産卵場所となる藻場の造成、稚ウニの放流などの取り組みが進んでいる。

 奄美群島水産振興協議会は18年、シラヒゲウニの種苗生産を県に要望。生産した稚ウニは今年から配布し、各漁協などで育成して放流する予定だ。

 奄美漁協では放流する海域を最低3年禁漁とし、年ごとに放流場所を変える計画。漁の解禁日はウニの生育状況を見ながら決定するという。

 ウニを含めた水産業振興の一環で藻場育成を実施していた名瀬漁協は17年から、奄美大島の藻場再生の先進地区、すみよう漁業集落や龍郷漁業集落の協力を得て「浮きフロート式ケージ(かご)」を使ったホンダワラの藻場再生事業を開始した。点検のためにケージを上げると、中からウニが見つかることもあるという。

 素潜り漁師の徳永正士さん(71)は「ウニの姿が戻ってきている海もある。餌を育てることと稚ウニを育てることを一緒に進めていけばこれから回復する見込みがあるはずだ」と話した。

藻場再生のためのケージを整備する漁業関係者=6日、名瀬漁協

藻場再生のためのケージを整備する漁業関係者=6日、名瀬漁協