ウニ種苗生産に挑戦 瀬戸内漁協で準備進む 群島全域で放流も

2020年08月03日

社会・経済 

瀬戸内漁協で種苗生産に取り組む栄さんとシラヒゲウニの水槽

瀬戸内漁協で種苗生産に取り組む栄さんとシラヒゲウニの水槽

 濃厚な甘みが特徴で、夏の味覚として親しまれてきたシラヒゲウニの資源回復に向けた取り組みが本格化している。奄美群島全域で実施している稚ウニを中間育成して放流する事業に加え、瀬戸内漁業協同組合では、卵からふ化させる種苗生産に挑戦しようと準備を進めている。

 

 シラヒゲウニはここ数年、まったく漁獲がない状況が続いている。関係者からは「餌となる海藻の減少」「過剰な漁獲」「生態系のバランスが崩れたからでは」などの声が聞かれるが、原因は明らかになっていない。

 

 資源回復に向け奄美群島水産協議会は2018年、県に協力を要請。公益財団法人かごしま豊かな海づくり協会(垂水市)が生産した稚ウニ(約10ミリ)が配布され、各漁業集落で約20ミリほどに中間育成して放流している。県大島支庁によると、19年は約2400個を放流、20年は3万個を群島全域に配布して中間育成しており、順次放流している。

 

シラヒゲウニ

シラヒゲウニ

 放流事業と並行し、瀬戸内漁協では奄美群島振興開発(奄振)事業の交付金を活用した試験的な種苗生産の準備が進んでいる。6基の水槽に放流分を含めて約3500個を育てており、10月にも親ウニから採取した良質な卵子と精子を受精させてふ化させ、来年3月にかけて稚ウニに育てる計画だ。

 

 ウニの餌は桑の葉が主体。食欲は旺盛で、漁師らが時折差し入れてくれる藻などはあっという間に食べてしまうという。海づくり協会で種苗生産を学んできた瀬戸内漁協の栄陽樹さん(32)は「特に水温や餌の与え方などに注意が必要。安定して生産していくことがとても難しい」と話した。

 

 同漁協の上田哲生参事(55)は「奄美の気候に合った生産手法が確立できれば、他の島でも応用できるはず。藻などの餌が不足していて育たないのであれば、将来的には陸で大量生産してブランド化することを考えてもいいのではないか」と期待した。