奄美にも〝値上げの波〟

2022年05月24日

社会・経済 

小売り店や飲食店が立ち並ぶ商店街「中央通りアーケード」=23日、奄美市名瀬

ロシアのウクライナ侵攻や円安など不安定な国内外情勢を背景とした原材料費、輸送費の高騰により、奄美にも〝値上げの波〟が押し寄せている。消費が冷え込まないよう、小売り業者は販売価格の調整や経費削減に苦心。飲食業界からは値上げだけでなく、新型コロナウイルス感染再拡大による客離れを懸念する声も聞かれた。経済の先行きが見通せない中、さらなる影響長期化へ不安が高まっている。

 

■苦心の経営

 

奄美市名瀬の中心商店街にあるスーパーマーケット「グリーンストア末広店」によると、仕入れ値が上がっているのは油や小麦粉、国外産の肉や魚など主に食品。見込みも含め「特に今年は値上がり品目が多種多様」だという。

消費低迷を避けるため、販売価格の設定には慎重だ。仕入れ値が上がった品目に限らず、幅広く商品の需要を見て調整する。屋山ひとみ店長は「どうにか売り上げへの影響を抑えている」と語った。

 

同店の買い物客にも話を聞くと、値上がりの影響や捉え方はさまざま。「どれも高くなった気がしてしまう」「特売品も多いのであまり実感はない」。収入面を踏まえ「非正規雇用で昇給がなく、家計の収支が崩れないか不安」「4月から年金額が下がった。節約しないと」といった声も聞かれた。

 

■先行き不透明

 

「油の高騰は痛い。光熱費も明らかに上がった」と語るのは、軽食や飲料を低価格で提供する「サンドイッチカフェ奄美」(同市名瀬)の山下和良社長。同店では昨年12月以降、全商品を10~20円値上げした。「油と小麦粉は主力商品の要。上がり続けると苦しい」と懸念する。

 

龍郷町の大型商業施設「ビッグツー奄美店」(松浦能久店長)も、食品など一部販売価格を1割ほど引き上げた。消費者に身近な値上げが多く、細かな日用品に関しては、店内に併設する「100円ショップ」で買い求める姿も目立ってきたという。

 

さらにウクライナ情勢でロシア産の材木は仕入れが止まり、中国製の家具・家電は同国の「ゼロコロナ政策」で生産が鈍化。担当者は「人件費は削れないし、物流費も切り詰めた。製品確保や経費削減を尽くすが、先行きは見通せない」と肩を落とす。

 

■コロナ禍も重く

 

同市名瀬の繁華街「屋仁川通り」で飲食店を巡ると、食材高騰とは別の不安も聞かれた。「行動制限なし」でにぎわった大型連休から一転、先週末は通り一帯が閑散とした。店主たちは「地元客は全然来ない。観光客が来てどうにか営業している状態」と口をそろえる。

 

背景にあるのは、奄美市内外で1月から続く新型コロナ感染者数の高止まり傾向。3形態の飲食店経営者は「地元の家族向けの焼き肉店は厳しく、観光客も来る海鮮料理店は比較的好調」と売り上げ状況を分析。県の第三者認証制度を積極活用するなど、各店で感染対策を徹底している。

 

他店も懸念を示すのは、値上げよりもコロナ禍。「島外客お断り」を続ける店もあり、島内での感染拡大は経営難に直結する。複数の居酒屋店主に話を聞くと「経費が増しても客が入れば『薄利多売』でしのげる」「観光客は値段を気にしないし、地元客は経営を気遣ってくれる」と値上げ事情を受け止めていた。