差別なき社会へ、誓い新た 和光園創立80周年記念式典 奄美市名瀬

2023年12月01日

社会・経済 

国立療養所奄美和光園で開かれた創立80周年記念式典=30日、奄美市名瀬

国立ハンセン病療養所・奄美和光園(馬場まゆみ園長)の創立80周年記念式典が30日、奄美市名瀬の同園であった。入所者や職員、来賓ら101人が出席。国の隔離政策などによりハンセン病患者の人権が侵害された過去を反省し、差別のない社会の実現に向け誓いを新たにした。

 

馬場園長は「これからも和光園が奄美の人々の施設であると言われる存在であり続けたい。今後も入所者が安心して生活を送り、地域の人たちとの交流がますます深まることを祈念する」と式辞。出席した入所者たちも歓迎のあいさつをして節目を祝った。

 

武見敬三厚労相の告辞(代読)では、国の隔離政策が社会に差別や偏見を生み、ハンセン病患者やその家族に苦痛を与えたとして反省と謝罪を述べた。全国13施設で暮らす計810人の入所者について「最後の一人まで良好かつ平穏な療養生活を営むことができるよう国としての責務を果たす」と誓った。

 

来賓祝辞では、塩田康一鹿児島県知事(代読)、安田壮平奄美市長、全国国立ハンセン病療養所施設長協議会の坂本浩之助会長、全国ハンセン病療養所入所者協議会の屋猛司会長がそれぞれ創立80周年を祝福。ハンセン病に関わる苦難の歴史を振り返り、二度と同じ過ちを繰り返さないことを強調した。

 

この後、大島郡医師会への感謝状贈呈があったほか、元職員と地域住民が祝い唄「長朝花」と「ワイド節」を披露。最後は全員で「和光園歌」を斉唱した。加納達雄名誉園長は「この80年、本当にたくさんの方々のご尽力をいただいた。今後も療養所の健全な運営と入所者の安住の住処を支えていく」と感謝と覚悟を述べた。

和光園は戦時下の1943年に設立。米軍統治下の47年、米軍政府が発令した「らい患者強制収容布告」により入所者が急増し、48年には沖縄愛楽園から100人以上の奄美出身者が引き揚げ入所した。

 

復帰後は国が定める「らい予防法」の執行機関として患者を収容・隔離。入所者数は58年のピーク時には342人に上った。96年にらい予防法が廃止され、2001年には違憲国家賠償請求訴訟で患者や元患者ら原告が勝訴。これに伴い入所者の一部は社会復帰し、施設は残った入所者の生活の場として存続した。

 

このほか、同園では1983年から一般外来保険診察を開始。2013年からは皮膚科の一般入院も可能となり、地域の医療施設としても機能している。

 

現在、同園の入所者数は11人(男性3人、女性8人)で、全国の療養所13施設の中で最少。平均年齢は87・6歳。ほとんどの入所者が55年以上を施設で過ごしている。