次代の担い手の門出祝う 「伝統工芸産業後継者育成事業」修了・入校式

2022年04月06日

社会・経済 

修了・入校証書を授与された(写真右から)深田和徳さん、濵田浩之さん、(同左)前之濱勇登さん

奄美大島で育まれた伝統工芸産業の人材確保と技術伝承を目的とする「奄美大島伝統工芸産業支援後継者育成事業」の修了式と入校式は5日、奄美市名瀬浦上町の本場奄美大島紬協同組合会議室であった。修了生2人と新入生1人の他、指導員や関係者ら約20人が出席。紬業界の次代を担う3人には証書が手渡され、それぞれの門出を祝った。

 

同事業は、深刻化する技術者の高齢化を背景に、後継者の指導・育成に取り組んでいる。2022年度からは、県地域振興推進事業補助金の交付終了を受け、本場奄美大島紬産地再生協議会が制度を引き継ぐ。

 

2年間の締(しめ)加工研修を終え、実家の紬工房を継ぐという深田和徳さん(34)=奄美市=は「締加工は正確さ、時間を要する作業。これからが本当の学びの始まりであり、一生をかけ、技術を勉強していく」と抱負を述べた。

 

グラフィックデザイン関係の職歴を生かし、図案研修を修了した濵田浩之さん(51)=同=は「後継者不足の現状を聞いたのを機に入校した。今後は紬組合に残り、業務の傍らで図案作成に励む。図案の製品化が目標」と意気込む。

 

入校生の前之濱勇登さん(39)=同=は、京都・西陣で約10年、織りと染めの職人として働く基盤を持つ。「『世界三大織物』と称されるゆえんに締加工がある。奄美にしかない工程を学び、今までの知識、技術を合わせ、独自の織りを築くことを目指す」とした。

 

同議会の牧雅彦会長は「修了生の2人にはさらなる技術の習得と今後の活躍に期待し、入校生には真摯な姿勢と着実な歩みによる技術の習得を望む」と激励した。