消費税増税まで1カ月

2019年09月01日

社会・経済 

タブレット端末と専用アプリを使ったレジシステム。導入費が低いなどの利点があるが、スマホになじみのない高齢者には運用が難しそうだ=29日、奄美市名瀬

タブレット端末と専用アプリを使ったレジシステム。導入費が低いなどの利点があるが、スマホになじみのない高齢者には運用が難しそうだ=29日、奄美市名瀬

 消費税増税まで1カ月。小売店は価格表示を変更したり、ポイント還元制度のためキャッシュレス導入を急ぐなどの対応に追われている。一方で軽減税率制度に対応するレジの供給が追いついていないなどの指摘もあり、奄美の事業者からは「事業を縮小する可能性がある」「手続きが複雑すぎる」「10月1日からすぐに新制度に対応できるのか不安だ」などの声も上がっている。

 

 レジ購入費の助成を受けるには、事業者が決められた期日までにレジメーカーなどと購入契約を交わし、設置・支払いを完了している必要がある。中小企業庁によると、支援対象として想定している約30万事業者のうち申請したのは7月末時点で約4割にとどまり、準備の遅れが懸念されている。

 

 同庁は8月27日、設置・支払い完了日の条件を従来の9月末から12月16日までに延長する緩和策を取った。しかし全国的に在庫が足りない中、延長した期限内でも納品ができない恐れがある。

 有限会社鹿児島事務機商会・大島営業所(奄美市名瀬)は昨年から奄美大島内でレジの買い替えフェアなどを実施してきた。契約を済ませた事業者には9月末までに納品予定だが、7月に入ってからも新たな問い合わせが増えているという。

 

 岡村睦男所長は「今は新規の注文は断らざるを得ない。政府の周知が不十分だった上に参院選などもあり、事業者が早めに対策できない状況だったことが全国的な混乱につながった」と指摘。「レジは各社とも海外で組み立てており、増産してもすぐに届くわけではない。今後注文をかけても年内の納品は難しいのではないか」と話した。

 

 商品管理と会計を行うレジシステムには従来の機械型のほか、スマホやタブレット端末と専用アプリを使用した新しいものも登場している。金額や商品区分は使用者が設定し、別売りの機材をつなげばクレジットカードやQRコードの読み取り機、レシート印刷機なども使用できるという。

 

 導入費を抑えられるタブレット端末型のレジは奄美群島でも若い経営者を中心に広がりを見せているが、日常的にスマホなどを使用していない高齢経営者にとって切り替えは容易ではない。

 

 家族経営で大島紬の小物と土産用の菓子などを販売している奄美市名瀬の商店では、新型レジの買い換えを検討中だった。経営者(37)は「70過ぎの両親が使い方を覚えられるのかが不安で迷っている。商品ごとに別会計にするか、いっそ食べ物の取り扱いをやめるという選択も……」と頭を悩ませていた。

 

 アルコール以外の飲食料品でも店内で食べる場合は「外食」として軽減税率の対象外となる。事業所側は価格表示の変更のほか、今後は飲食場所の確認などの対応も必要だ。

 

 奄美市でスーパーマーケットなどを展開する株式会社グリーンストア(里泰慶社長)は、一部店舗に備えているイートインスペースを撤去する見込み。売り場では消費者に分かりやすいように価格表示を現在の税込価格から本体価格+税の形に切り替え、税率ごとに値札を色分けするという。

 

 小売店や飲食店では仕入れ値の値上げに合わせ、商品内容の見直しを検討する店もある。市内の飲食店では「人気メニューは中身や量を変えるのは難しく、値上げするしかない」「扱うメニューを減らして対応する。客足が落ちないか心配だ」という声も聞かれた。