要約筆記者派遣、大きな助けに 奄美市、難聴保護者の授業参観支援

2020年07月03日

社会・経済 

学級PTA会合で、要約筆記者(左)の筆記で、話し合われている内容を確認する大野さん=1日、奄美市の小学校

学級PTA会合で、要約筆記者(左)の筆記で、話し合われている内容を確認する大野さん=1日、奄美市の小学校

 奄美市で1日、聴覚障がい者を支援する要約筆記者の派遣事業が初めて行われた。同市の依頼で県視聴覚障害者情報センター(鹿児島市)に登録している要約筆記者1人が派遣され、依頼者の大野歓(よし)さん(46)に、大野さんの長男が通う小学校の授業参観、学級PTA会合での意思疎通を支援した。

 

 要約筆記は聴覚障がい者への情報保障手段の一つで、話されている内容を要約し、文字として伝える。主に手話を使わない難聴者・中途失聴者などを対象とし、要約筆記作業に従事する通訳者は要約筆記者、要約筆記奉仕員と呼ばれる。障がいのある人への支援を定めた障害者総合支援法では、地域生活支援事業の中で、要約筆記者派遣を含む意思疎通支援を市町村の必須事業としている。

 

 奄美市は4月に同派遣事業をスタート。本来なら市内にいる要約筆記者を派遣する事業だが、同市に登録しているのは要約筆記奉仕員1人のみ。今回は同奉仕員の都合がつかず、特例として、要約筆記者派遣(コーディネート事業)を行っている同センターに依頼した。

 

 大野さんは難聴のため、特に仕事やPTA活動の研修や会議で不特定多数の会話が聞き取れずに大切な連絡事項を把握できなかったり、最近では新型コロナウイルス感染症拡大防止のためのマスク着用で相手の唇の動きが読み取れず、コミュニケーションに支障を来したりと、日常のあらゆる場面で困り事を抱えている。

 

 この日は要約筆記者が大野さんにノートテイク(対象者の横で話の内容を用紙に筆記する手法)で、担任教諭や児童、他の保護者の発言や、どういう会話の流れで周囲が盛り上がっているかなどを伝えた。

 

 初の要約筆記者派遣を受け、大野さんは「大切な内容を取りこぼしなく情報保障していただき、大きな助けになった」と笑顔。一方、奄美に要約筆記者が不足していることで派遣事業が進まない現状があるとして、「情報保障を必要としている方は奄美市だけではなく、他の町村にもいるので、要約筆記者が増えるように養成事業が進むことを願っている」と力を込めた。