SOS出せる地域に 子どもの支援テーマに研修会 加藤杏林大教授が講演 奄美地区地域自立支援協

2024年01月27日

社会・経済 

「子どもに寄り添う対人支援」について加藤雅江さん(円内)が講演した奄美地区地域自立支援協議会の研修会=26日、奄美市名瀬

奄美地区地域自立支援協議会(会長・麻井庄二奄美市福祉政策課長)の研修会が26日、奄美市名瀬のアマホームPLAZA(市民交流センター)であった。杏林大学健康福祉学部教授の加藤雅江さんが「子どもに寄り添う対人支援」をテーマに講演。加藤さんが理事長を務める居場所づくりプロジェクトの活動を報告したほか、関係機関が連携し、子どもや親がSOSを出せる地域を構築する必要性を説いた。

 

加藤さんは約20年間、杏林大学付属病院医療福祉相談室でソーシャルワーカーとして勤務。その中で自殺未遂者や暴力被害者に多く対面し、支援を行ってきた。2016年にNPO法人居場所づくりプロジェクト「だんだん・ばぁ」を立ち上げ、子ども食堂などの活動に取り組む。

 

研修会には奄美大島5市町村の福祉サービス事業所や教育、医療機関、行政の担当者などオンラインを含め約110人が参加した。

 

講演で加藤さんは子どもの数や子どものいる世帯の減少に触れ「今は子ども自体がマイナーな存在。大多数の人に自分には関係ないとされてしまう」と問題提起。

 

子育て世代が孤立しているのにもかかわらず、SOSが発信されない理由としては、情報にアクセスできない環境や相談することの敷居の高さ、「支援を受ける人」のステレオタイプのイメージなどを挙げ、社会に受け入れてもらえたという体験を実感する機会が大切とした。

 

関係機関と連携することの目的は、個々の「困りごと」のつながりを探り、情報の集約によって家庭を立体的に理解することとし、「情報共有をするときに自分から見えていることが全てではなく、ほかの人たちの専門的な意見を聞きながら確認をしていくことが必要」と話した。

 

終わりに、地域の中でできる子育て支援として、変化を求めないことやこちらの物差しで「困りごと」を決めつけないことなどを紹介。子どもの発信、発言の機会を保障し、サインをすくい上げることを心掛けていきたいと結んだ。

 

研修会の後半は、龍郷町子ども子育て応援課の保育士・川口みどりさん、奄美市教育委員会のスクールソーシャルワーカー・福山八代美さん、聖隷福祉事業団のぞみ園の主任相談支援専門員・大海智美さんによるパネルディスカッションがあり、それぞれの事例や課題などを報告した。