製糖技術、文化財に登録へ 県内初の「登録無形民俗」 文化審議会答申

2024年01月20日

社会・経済 

煮詰めたサトウキビの搾り汁を手作業で攪拌(かくはん)していく「まごころ製糖」の作業風景=2023年12月、和泊町

国の文化審議会(佐藤信会長)は19日、奄美群島を含む「薩南諸島の黒糖製造技術」を登録無形民俗文化財に登録することを文部科学大臣に答申した。鹿児島県内で登録無形民俗文化財が登録されるのは初。官報に告示され正式に登録される。

 

登録無形民俗文化財は、少子高齢化や過疎化による担い手不足や、コロナ禍によって継承活動に影響を受ける文化活動を、幅広く保護しようと2021年に施行された制度。今回の答申により、全国では6件の登録となる。

 

「薩南諸島の黒糖製造技術」は、種子島から与論島までの島々に伝承されている黒糖製造技術。対象となる団体は特定せず、製糖工程で昔ながらの手作業による熟練の技術伝承がみられる活動を保護していく。登録されることで伝承のための冊子等の制作費用の一部を国が補助する。

 

先代の父から釜炊き製法を引き継いでいる「まごころ製糖」(和泊町)の平そのみ代表(56)は「先人たちが築いてきた伝統技術の継承に携わっていることに誇りを感じている。子や孫の代になっても変わらず、一つ一つの過程に心を込めて引き継いでいってほしいと願う」と語った。

 

創業38年の「水間黒糖製造工場」(龍郷町)の水間範光さん(62)は「先人たちから続いてきた営みが認められてうれしい」と笑顔。長男の光亮さん(32)が4年前にUターンし継承に取り組む中、技術の伝承について「教わるものではなく自分でやってみて分かるもの。体験して勘を養っていってほしい」と話した。

 

「奄美きょら海工房」(奄美市笠利町)の福原隆寿さん(44)は「コロナ禍で販路が減り、苦しい時期もあった。原料となるサトウキビを作る農家も減ってきている。島に残された文化を大事に継承していきたい」と話した。