与論全域に分布、定着 特定外来生物シロアゴガエル 急拡大、奄美他島も警戒を

2019年08月04日

与論島全域への定着が確認された特定外来生物シロアゴガエル(奄美海洋生物研究会提供)

与論島全域への定着が確認された特定外来生物シロアゴガエル(奄美海洋生物研究会提供)

 与論島で2013年に初めて侵入が確認された特定外来生物シロアゴガエルが、島内で急速に分布を拡大し全域に定着していることが奄美海洋生物研究会(興克樹会長)の調査で分かった。生態系に影響を及ぼす恐れがあるため、興会長は群島内の他の島々への侵入防止に向けて、「住民への啓発と、輸送物資の点検や侵入初期の防除など取り組みの強化が必要」と指摘している。

 シロアゴガエルは東南アジア原産。体長5~7㌢の中型のカエル。背面全体が褐色で、口の上側の白い縁取りや、ギィ、グイッと単発的に鳴くのが特徴。オタマジャクシは鼻先に白い斑点がある。直径5~8センチほどのメレンゲ状の卵塊(泡巣)を池や水面上の木の枝、コンクリート壁面などに産み付ける。

 国内では沖縄島中南部で1960年代に初めて生息が確認され、急速に分布を拡大して、2000年代に無人島や八重山諸島の一部を除く沖縄県内のほぼ全域に定着した。鹿児島県内では与論島で13年5月に初確認された。

 与論島の調査は、シロアゴガエルの分布状況を把握するため、奄美海洋生物研究会が公益社団法人ゴルフ緑化促進会の国立・国定公園支援事業の一環で今年6月に実施。同島全域の本格的な調査は初めて。

 調査した47地点のうち、39地点で鳴き声や生体、卵を確認。13年に確認されていた島南西部から、島全域に広がっていることが明らかになった。

 シロアゴガエルが定着することで、餌となる昆虫類など在来生物の減少や、在来カエル類との競合、寄生虫の広がりなどが懸念されるという。

 同研究会によると、沖縄ではフィリピンからの物資に紛れて沖縄島に移入され、輸送によって他の島にも広がった。与論島へも物資の輸送によって侵入したとみられる。

 興会長は「小さなカエルは物資に紛れて容易に他の島に入れる。数匹から莫大(ばくだい)に増える恐れもある。広がれば奄美の固有種にどう影響するか分からない」と警鐘を鳴らした。