クロウサギ大幅増と算出 絶滅危険度引き下げ視野に 環境省、推定値見直し 奄美大島・徳之島
2022年12月17日
環境省は16日、アマミノクロウサギが長期的に回復しており、生息数は2021年度時点で奄美大島約1万~3万4400匹、徳之島約1500~4700匹と推定されると公表した。03年度時点で奄美大島2000~4800匹、徳之島100~200匹としていた推定を大幅に見直した。同省はレッドリストのランクを現在の絶滅危惧ⅠB類からⅡ類以下に引き下げる目標を掲げており、生息数、分布域の増大によって「条件を満たしている」と評価した。
同省は2000年度から種の保存法に基づいて、国内希少種に指定されたクロウサギとアマミヤマシギ、オオトラツグミの3種の保護増殖事業を進めている。レッドリストのランク引き下げなどを目標に掲げた23年度まで10カ年の実施計画を策定し、保護対策に取り組んでいる。
同日に奄美市名瀬で開かれた奄美希少野生生物保護増殖検討会(座長・石井信夫東京女子大学名誉教授、委員6人)の会合で3種の生息状況について報告があった。
環境省によると、クロウサギの生息数は、06年度に始まったふんを数える調査や自動撮影カメラの画像など、これまでのデータと合わせて、20、21年度の動画データを分析し、奄美大島1万24~3万4427匹、徳之島1525~4735匹と算出した。
生息数の増加は、森林の回復に加えて、クロウサギを襲うマングースの駆除や野生化した猫(ノネコ)の捕獲など、保護対策が進んだためとみられる。
アマミヤマシギは21年度時点で奄美大島7520~2万6247羽、徳之島407~3840羽、加計呂麻島309~1083羽、オオトラツグミは17年時点で奄美大島2000~5000羽と推定。ともに大きく増加しているとして、レッドリストでそれぞれ絶滅危惧Ⅱ類からランク外とする目標を「達成している」と評価した。
同省奄美群島国立公園管理事務所の阿部愼太郎所長は「生息状況が改善していることは明らか。回復は目を見張るものがある」と手応えを示す。クロウサギの増加に伴い、ロードキル(交通事故死)やタンカン樹皮などの農業被害も増えており、「人の生活と野生生物の生息エリアをうまく区切れるといい」と住民に理解と協力を求めた。