河口の森 花ざかり オヒルギ・メヒルギ 亜熱帯の彩り⑨
2020年08月27日
奄美大島中南部の住用湾奥、奄美市住用町の住用川と役勝川が流れ込む河口に、こんもりと広がるマングローブの森。盛花期の夏を迎えたオヒルギとメヒルギの紅白の花が、鮮やかに浜辺を彩っていた。
マングローブは熱帯、亜熱帯地域の海水と淡水が混ざり合う場所に生える植物の総称。同島で主に見られるのはオヒルギとメヒルギ。住用町の群落は、国内では沖縄・西表島に次いで2番目に広い70ヘクタール超に及び、奄美群島国立公園の特別保護地区。水際に並ぶ木々は、満潮時には海水につかり、干潮時には外気にさらされる特殊な環境でたくましく生きる。
とがった葉と膝を曲げたような根(膝根)を持つオヒルギに対して、メヒルギは丸い葉と板状の根(板根)が特徴。それぞれ紅白の花びらのように見えるのは萼(がく)。花弁はその内側で目立たない。果実が樹上で発芽して、細長い「胎生種子」がぶら下がり、落ちて泥に刺さって根付いたり、海流に乗って漂う。
かつては本場奄美大島紬の染料として、テーチ木(シャリンバイ)とともに使われた。多様な生き物が暮らし、豊かな生態系を育むマングローブは「生命のゆりかご」ともいわれる。