イノシシわなにクロウサギ 過去にも複数例確認 実態の把握と対策必要 徳之島北部

2023年02月19日

イノシシ用わなにかかったアマミノクロウサギ(上)と、わなで縛り上げられた後ろ足(ともに関係者提供)

徳之島北部の山中で16日、農作物への食害対策として仕掛けられていたイノシシ用のわなに、国指定特別天然記念物のアマミノクロウサギが誤ってかかっていたことが確認された。かかっていたのは雄の成獣。けがはなく、自然保護団体の関係者らがわなを外した後、自力でその場を離れた。過去にもイノシシのわなにかかったクロウサギがけがをしたり死んだりした事例が複数確認されているという証言もあり、関係者からは早急な実態の把握と対策を求める声が上がっている。

 

関係者によると、島北部在住の農業男性が同日午前、自身が仕掛けたわなを点検した際にクロウサギを見つけた。

 

わなはイノシシのサトウキビ食害を防ぐために設置したもので、ワイヤで獲物の足をくくって捕らえる「くくりわな」と呼ばれるタイプ。関係者が救助の様子を撮影した動画では、クロウサギは両方の後ろ足をワイヤに縛られて動けなくなっていたが、ワイヤを外しけががないのを確認して解放すると、跳ねながら山に帰っていった。

 

わなを仕掛けた男性によると、これまでに30匹以上のクロウサギを誤って捕獲。今年に入ってからは2匹目で、4年ほど前から増加傾向にあり、昨年は6匹かかったという。

 

男性は「過去には、けがをしたり死んだりしたクロウサギもいた」と打ち明け、「自分以外にも多くの人がわなを仕掛けている。クロウサギへの脅威はロードキル(交通事故死)より大きいかもしれない」と対策の必要性を訴えた。

 

救助に携わった自然保護団体の関係者は「クロウサギの数が増えてきたことで、新たな課題が浮上してきているが、徳之島にはまだ管理計画も対策室もできていない」と指摘。「農家とクロウサギの両方を守ることは、自然保護関係者だけでは不可能。行政も自治体の枠を越えて、島全体で取り組む必要がある」と強調した。