クジラの親子打ち上がる 龍郷町安木屋場海岸

2022年04月17日

浜に打ち上げられたクジラの親子と救助に当たった住民ら=16日午前8時50分ごろ、龍郷町安木屋場(荒田兼吾さん提供)

龍郷町の安木屋場海岸で16日朝、体長3・5㍍の小型クジラが打ち上げられているのが見つかった。地元住民らによる救出中に、クジラは海中で出産したとみられ、子クジラも発見されたが息をしていなかった。母クジラも懸命の救助が続けられたが次第に衰弱し、約4時間後に死んだことが確認された。住民と救助に当たった奄美クジラ・イルカ協会の興克樹会長は「せめてお母さんだけでも助かればと思ったが残念。台風によるしけで漂着したのでは」と話した。

 

興会長によると、クジラはコビレゴンドウの雌で、頭部が大きく太鼓のような形をしているのが特徴。世界中の温帯や熱帯の海に広く分布。沖合を移動するため、沿岸でみられることはあまりないという。奄美大島では2018年5月、大和村津名久に雄の死骸が漂着した記録がある。

 

16日午前7時50分ごろ、安木屋場海岸を通り掛かったバスの運転手が浜にクジラが打ち上げられているのを発見し、地元住民に知らせた。住民ら約10人が駆け付け、クジラを海へ移す作業をしていると、海面に子クジラが浮き上がったという。

 

子クジラは浜へ打ち上げられて死んだことが確認された。体長1・4㍍の雌で、体には胎児のときにできるしわの跡があり、生まれたばかりとみられる。

 

連絡を受けた興会長と同協会メンバーも駆け付け、母クジラを泳いで沖へ戻そうとしたが、クジラは流されて消波ブロックにぶつかってけがを負い、午前11時45分ごろ、浜から約500㍍北側のリーフで死んた。

 

海岸には大勢の住民が集まり、「頑張れ」とクジラの救助を励ました。救助に当たった近くでキャンプ場を営む荒田兼吾さん(42)は「波が荒れていて、何度も浜に戻って来た。どうしたらいいか分からず、みんな夢中で助けようと頑張った」と話した。

 

クジラの親子は興会長らが17日に解剖して海岸に埋設する。興会長は「住民が協力して対応できたのは素晴らしいこと。貴重な資料になるので、親子を一緒に骨格標本にして活用したい」と述べた。

母クジラを押して沖へ運ぶ興会長(手前)ら=16日午前10時ごろ