クロウサギ「混獲防止徹底を」 ノネコ捕獲検討会、奄美大島

2023年02月10日

ノネコの捕獲状況について報告があった検討会=9日、奄美市名瀬

環境省が奄美大島で進める野生化した猫(ノネコ)の捕獲に関する検討会(座長・石井信夫東京女子大学名誉教授、委員4人)が9日、奄美市名瀬の市民交流センターであった。徳之島でアマミノクロウサギ2匹がノネコ捕獲用わなの中で死んでいた件について、同省職員が説明。委員会は「避けられた混獲死だった」とした上で、「ノネコ捕獲事業は在来種の保護に効果が出ている。再発防止にしっかりと取り組んだ上で余裕をもって進めてほしい」と意見した。

 

ノネコの捕獲は生態系の保全を目的に、環境省と県、奄美大島5市町村が策定したノネコ管理計画に基づいて2018年7月に開始した。検討会には島外からのオンライン参加も含め、学識経験者で構成する委員と関係者ら約100人が出席した。

 

環境省の報告によると、22年度の奄美大島でのノネコ捕獲数は77匹。このうち35匹は、集落にいる野良猫などが山中に入り込んだとみられる不妊・去勢手術済みの個体だった。

 

捕獲エリアは前年度から新たに3地域を追加し、島全体の約59%に当たる424・8平方㌔に拡大した。18年の事業開始以降の捕獲総数(23年1月末現在)は406匹。

 

捕獲エリア内に設置した自動撮影カメラには親子と見られる複数の猫が映っており、アマミノクロウサギやアマミトゲネズミなどをくわえて運ぶ猫の様子も記録されていた。カメラデータから山中で繁殖し子育てしているノネコの行動圏が解析され、「雄に比べて行動圏が狭い雌に捕獲圧をかけることが効果的ではないか」との見解が示された。

 

23年度は捕獲エリアに奄美市名瀬の知名瀬エリア(49・3平方㌔)を加える予定。環境省は10カ年計画の目標を達成するため、奄美大島全域での早期の捕獲体制確保に向けて事業の効率化などを図るとした。

 

検討会の中で、先日徳之島でノネコ用わなの中で死んだアマミノクロウサギが見つかった件について、環境省・奄美群島国立公園管理事務所が説明した。

 

同省によると、奄美大島では、警戒心が強くわなにかからない個体「トラップシャイ」への対応として、入口を閉じた非稼働のわなを設置し、わなの存在自体に慣れさせる方法が取られている。徳之島ではこの方法は行わないよう指導していたが、現地で事業を委託していた業者によって非稼働のわな設置が行われていたらしい。

 

えさを設置して入口を開けた稼働わなの場合は、設置後に1日1回以上の見回り点検が行われている。徳之島の件では、該当の非稼働わなを置いた業者が入口を閉め忘れたか、設置後に第三者が入口を開けた可能性もあるという。

 

阿部愼太郎所長は「指導が行き届かず想定と違う捕獲の方法が取られていたことが事故につながった。申し訳ありません」と謝罪。トラップシャイ個体へのアプローチは徳之島のノネコ捕獲事業でも必要となるため、今後は非稼働わなの設置後に写真を撮って入口の閉め忘れを防止するなど複数の対策を検討するとした。