ケナガネズミ保護 市街地でわなにかかる 奄美市名瀬 回復し野生復帰へ

2023年08月22日

保護され治療を受けたケナガネズミ=21日、奄美市名瀬

奄美市名瀬の建設現場で9日、国の天然記念物ケナガネズミがネズミ捕りに掛かっているのが見つかり、市内の動物病院に運ばれた。衰弱していたものの大きなけがなどはなく、22日には山中へ放される見込み。獣医師は「街なかでケナガネズミの出没が増えている。けがをしていたり動けなくなっているのを見つけたらすぐに関係機関に連絡を」と呼び掛けている。

 

ケナガネズミは奄美大島と徳之島、沖縄本島だけに生息する固有種。体長が20~30センチとネズミの仲間では国内最大で、背中の長い剛毛が名前の由来。尾は胴体より長く、先端側が白い。夜行性で主に木の上で生活し、木の実や昆虫類、カタツムリなどを主食としている。環境省のレッドリストで絶滅危惧ⅠB類に指定されている。

 

保護された個体は粘着式のネズミ捕りに下あごや前足、左後ろ足などがからめ取られた状態で見つかり、連絡を受けた奄美市世界自然遺産課の職員がゆいの島どうぶつ病院(同市名瀬)へ運んだ。粘着剤の除去、酸素吸入などの手当てを受けて体重も増え、無事に野生に戻れる見込みという。

 

ケナガネズミは山中のマングース防除、ノネコ対策などの外来種対策の効果や、昨年のドングリの豊作などで個体数が増加傾向にあると考えられ、市街地への出没が増加している。環境省は侵入口となる家屋の隙間をふさぐ、粘着式ネズミ捕りではなくケナガネズミが入らない小さなかご式わなを使用するなどの配慮を求めている。

 

新屋惣獣医師(30)は「今回は見つかってすぐに治療に当たれたことが奏功したと思う。弱った個体を見つけた場合は病原体保有の可能性もあるので手で触れず、病院や各市町村役場や環境省に知らせてほしい」と話した。