「因果関係の精査必要」 ロードキル増加に識者 奄美・沖縄世界自然遺産科学委

2023年10月28日

世界自然遺産

世界自然遺産地域の保全管理状況を議論した「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」世界自然遺産地域科学委員会の会合=27日(テレビ会議システム・ズームの画面を撮影)

「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」世界自然遺産地域科学委員会(委員長・中島慶二江戸川大学国立公園研究所長、委員12人)の会合が27日、沖縄県那覇市の県青年会館であった。オンライン併用で環境省や鹿児島、沖縄両県、市町村の各担当者を含む約80人が出席。関係機関で策定したモニタリング計画に基づく遺産地域の保全管理状況に関して、2022年度の評価結果などを共有し議論した。希少動物のロードキル(交通事故死)増加について「地域ごとに因果関係を精査する必要がある」などの意見が出た。

 

同科学委は学識経験者らで構成し、奄美・沖縄における自然環境の適正な保全管理へ助言を行う。27日は、10年間(20~29年度)のモニタリング計画を基に、22年度の評価結果や目安5年ごとの中間評価の指標・方法などを中心に質疑を交わした。

 

モニタリング計画は18年、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関・国際自然保護連合(IUCN)が当時候補地の奄美・沖縄に「登録延期」を勧告した際、指摘した課題の一つ。19年に策定し、希少種の生息状況や脅威、観光利用など5項目について地域ごとに継続的に評価している。

 

22年度の評価結果について、事務局は「遺産価値に一定の悪影響やその恐れがあり、改善の余地がある」現状として▽ロードキル▽外来種による捕殺▽飼い猫の管理-などを挙げた。

 

奄美大島、徳之島に関しては「アマミノクロウサギのロードキルが増加傾向」と指摘。さらに「近年、イヌ・ネコによる希少種の捕殺が毎年発生している。奄美大島では飼い猫の不妊去勢手術や室内飼養などが進んでいるが、徳之島では対策強化が必要」とした。

 

こうした現況評価に対し、委員からはロードキル増加の要因分析の必要性を重視する意見が相次いだ。マングース駆除やノネコ対策が進んでいることを踏まえ、ウサギの個体数や生息地付近の車両交通量との関係性を調べるなど「因果関係を精査してから議論すべき」と指摘した。

 

このほか、モニタリング計画をおおむね5年ごとに見直す中間報告についても意見が寄せられ、事務局はより実情に合い、多角的で効果的な評価指標・方法を検討する意向を示した。