ユネスコ報告案を協議 世界自然遺産地域連絡会議・奄美大島部会

2022年10月04日

世界自然遺産

オンラインでユネスコへの報告書案について協議した奄美大島部会=3日

「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」の世界自然遺産地域連絡会議の奄美大島部会が3日、オンラインで開かれた。官民の関係者約70人が参加。国連教育科学文化機関(ユネスコ)へ提出する報告書案について協議した。専門家向けに作成された報告書案の内容に、地元関係者から「難しくて分からない」と住民に分かりやすい説明を求める声が上がった。

 

報告書案の内容は▽観光管理▽(絶滅危惧種の)ロードキル(交通事故死)対策▽河川再生▽森林管理│の4項目。昨年7月の奄美・沖縄の世界遺産登録に伴い、世界遺産委員会が示した各課題について、関係機関と専門家で構成する特別チームが対応をまとめた。

 

観光管理では、「西表島観光管理計画」を策定し、利用が集中する遺産地域で法的拘束力のある立ち入り規制などに取り組む方針を盛り込んだ。奄美大島や徳之島は、新型コロナウイルスの影響で観光客の急激な増加はみられないとして、引き続き「奄美群島持続的観光マスタープラン」に基づいて観光客を分散させる取り組みなどを進める。

 

ロードキル対策は、4島でそれぞれアマミノクロウサギやヤンバルクイナ、イリオモテヤマネコなどの被害が長期的に増加傾向にあると指摘。徳之島はクロウサギの生息地が南北に分断されているため、「影響が特に懸念される」と重要性を強調した。奄美大島と共に事故が多発するエリアを抽出し、道路への侵入防止柵の設置などを検討する。

 

河川再生は新たに包括的戦略を策定。主要な河川に設置した砂防ダムなどの工作物について、生息する希少種への影響を分析し、防災機能を確保した上で、長期的に自然な流れの再生を目指す。

 

森林管理は、奄美大島と徳之島で「自然環境に配慮した森林施業方針」を林業関係者と県が策定。遺産地域では伐採を行わないほか、遺産周辺の緩衝地帯などで伐採面積の上限などを定めた。行政が事業者と伐採する場所や面積の情報を共有し、環境保全に必要な場合は計画変更を求めるなど調整を行うとしている。

 

報告書は専門家で構成する科学委員会(5日)と、奄美・沖縄関係12市町村長らによる地域連絡会議(12日)での了承を経て、12月1日までにユネスコへ提出する。