ロードキル対策強化を 世界遺産の奄美大島連絡部会

2022年02月18日

世界自然遺産

オンラインで関係者らが課題への対応を協議した奄美大島部会=17日

「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」の世界自然遺産地域連絡会議の奄美大島部会が17日、オンラインで開かれた。関係者ら約60人が出席。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会が示した課題4項目への対応を協議した。急増している国の特別天然記念物アマミノクロウサギのロードキル(交通事故死)について、出席者からドライバーへの普及啓発など対策の強化を求める要望があった。

 

地域連絡会議は、行政や地元団体など関係機関の調整や合意形成を図る目的で設置され、奄美・沖縄の4地域にそれぞれ部会を設けて遺産地域の適正な管理の在り方を検討している。

 

昨年7月の奄美・沖縄の世界遺産登録に伴い世界遺産委員会が示した課題は▽特に西表島における観光客の制限(観光管理)▽アマミノクロウサギなど絶滅危惧種のロードキル対策▽包括的な河川再生戦略の策定▽(遺産区域周辺の)緩衝地帯での森林伐採制限。今年12月1日までにユネスコに報告するよう求めた。

 

各課題について、関係機関と専門家の特別チームで検討を進める報告内容の方向性や骨子案が示された。観光管理は遺産地域の金作原(奄美市名瀬)、三太郎峠(同市住用町)、湯湾岳(大和村、宇検村)の来訪者の増加を見据えた利用規制などの取り組みを盛り込む方針。

 

河川再生戦略の骨子案では、主要な河川に設置された砂防ダムなどの工作物について、絶滅危惧種のリュウキュウアユなどへの影響を調査し、防災機能を確保した上で、長期的に河川の自然な流れの再生を目指す。

 

緩衝地帯での森林伐採は、大部分が国立公園の第2種特別地域に指定され、自然公園法で規制されている。骨子案では、関係者の要望を踏まえて持続可能な林業を継続しつつ、伐採後の再生過程や野生生物への影響を調査するとしている。

 

ロードキル対策は今月に特別チームの会合を開いて報告内容を協議する。奄美大島ではクロウサギのロードキルが2020年に50件、21年に56件と過去最多を更新した。同島で進む道路への侵入防止柵の設置について、自然保護関係者から「生息環境に影響を与える」と懸念が示された。環境省の担当者は「設置場所や長さなど、生息地を分断しないように考えていく」と述べた。

 

18日は世界自然遺産地域連絡会議の徳之島部会がオンラインで開催される。