奄美大島、湯湾岳登山ルール試行 世界遺産の森、保全と利用両立へ

2022年11月26日

世界自然遺産

少人数利用とガイドの同行を推奨している湯湾岳の宇検村側登山道=25日、奄美大島

希少な動植物が多く、世界自然遺産の主要エリアとなっている奄美大島の湯湾岳(大和村・宇検村)で25日、一部区域への立ち入り規制などを盛り込んだ利用ルールの試行が始まった。同日は環境省が山頂近くの広場に整備していた展望台が完成し、関係者らにお披露目された。同省は「貴重な自然環境の保全を前提に、持続可能な利用の推進を図る」として、登山者に協力を呼び掛けている。

 

湯湾岳は奄美最高峰の標高694・4メートル。亜熱帯照葉樹の森にアマミノクロウサギなど希少種、固有種を含め多様な動植物が生息・生育している。奄美大島を開祖した二神が降り立ったといわれる霊峰で、参拝に訪れる登山者も多い。

 

利用ルールは世界自然遺産登録に伴う登山者の増加を見据えて、専門家や地元関係者らの意見を踏まえて環境省、林野庁、県、大和、宇検両村が策定した。

 

山頂付近と、展望台が整備された祠(ほこら)や石碑がある広場へ続く登山道2ルート、登山口にある公園などを▽保全ゾーン▽準保全ゾーン▽自然体験ゾーン―の3エリアに区分し、それぞれ利用方針を定めた。

 

保全ゾーンは、山頂から展望台がある広場に続く約250メートルの山道。厳正に保護するため立ち入りを原則禁止する。準保全ゾーンは、宇検村側の登山道約1・6キロ。環境負荷を軽減するため、利用は1グループ8人程度以下の少人数とし、ガイドの同行を推奨する。

 

自然体験ゾーンは、宇検村側の登山口のある湯湾岳公園周辺と、展望台の広場まで木道が整備された大和村側の登山道約370メートル。誰でも自由に利用できる。

 

湯湾岳周辺は奄美群島国立公園の特別保護地区に指定されており、全ての動植物の捕獲、採取が禁止されている。ルールでは他に▽外来種の持ち込み▽植物の踏み荒らしや樹木の伐採▽歩道や広場以外への立ち入り―などを禁止した。

 

関係者の合意に基づく地域の自主ルールで、法的強制力はない。

 

同省奄美群島国立公園管理事務所の阿部愼太郎所長は「湯湾岳は生物多様性の核となる場所。神聖な場所として信仰の対象になっている。きちんと保護しながら利用していく必要がある」と述べた。