輪禍対策「見直し必要」 世界遺産地域連絡会議 クロウサギ事故増で指摘 関係首長らユネスコの課題協議

2022年05月21日

世界自然遺産

奄美・沖縄12市町村長が出席した世界自然遺産地域連絡会議=20日

「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」世界自然遺産地域連絡会議が20日、オンラインで開かれた。奄美・沖縄関係の12市町村長ら約80人が出席。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会が報告を求めた課題4項目について、対策の方針などを盛り込んだ骨子案の協議を行った。奄美大島と徳之島で増加傾向が続くアマミノクロウサギのロードキル(交通事故死)について、専門家から対策が有効かどうかを「見直す必要がある」と指摘があった。

 

世界遺産委員会が昨年7月の登録決定に際して示した課題は▽特に西表島における観光客の制限▽アマミノクロウサギなど絶滅危惧種のロードキル対策▽包括的な河川再生戦略の策定▽緩衝地帯での森林伐採の制限。今年12月1日までにユネスコへ報告書の提出を求めた。

 

クロウサギのロードキルは、2021年に奄美大島と徳之島で過去最多の計73件に上った。関係機関と専門家でつくる特別チームがまとめた報告の骨子案では、事故が多発する奄美大島9カ所、徳之島5カ所を優先して対策を検討するエリアと位置付けた。

 

オブザーバーとして出席した奄美・沖縄の世界自然遺産地域科学委員会で委員長を務める土屋誠琉球大学名誉教授は、クロウサギの輪禍が「残念ながら減少していない」と指摘。「(世界遺産委員会の)要請事項には、今の対策は本当に有効か見直せと書いてある。しっかり見直すチャンスでもあり、私たちがしなければいけない義務と捉えるべき」と述べた。

 

地域連絡会議は、奄美・沖縄の行政や地元団体など関係機関の調整や合意形成を図る目的で設置され、4地域にそれぞれ部会を設けて遺産の適正な管理の在り方を検討している。

 

就任後、初めて出席した安田壮平奄美市長は「責任感と使命感を持って自然環境の保全と活用に努める」、前泊正人竹富町長は「持続可能な環境の保全に努めてまいりたい」と抱負を述べた。