住民参加の調査体制構築へ 地域の目で外来植物の侵入監視 鹿大がワークショップ

2023年02月05日

外来植物について会場との意見交換もあったモニタリングワークショップ=4日、奄美市名瀬

奄美・沖縄の世界自然遺産地域の外来植物に関するモニタリングワークショップが4日、奄美市名瀬の市民交流センターであった。「地域の目が捉える外来植物の侵入」をテーマに、研究者らが各地の現状を報告し、民間団体や住民らが調査や駆除の取り組みを紹介した。遺産地域の保全に向けたモニタリング体制構築へ「植物を見分けられる人を増やすことが大事だ」との指摘もあった。

 

鹿児島大学鹿児島環境学研究会主催。絶滅危惧種を含め固有種が多く生育する奄美大島で、在来植物を脅かす外来植物に住民が理解を深め、住民参加型のモニタリング調査の体制構築を進めようと環境省と共催。約30人が参加した。

 

同研究会は昨年10月、地域住民を対象にした外来植物のモニタリング講習会を奄美大島で初開催。参加した住民6人が約2カ月間、島内各地で外来植物の調査に取り組み、300件以上の情報提供を行った。

 

同大国際島嶼(とうしょ)教育研究センターの鈴木英治特任教授が住民の調査を踏まえて、奄美大島の外来植物の分布状況などを報告。遺産地域内での確認は少ないものの、アカギなどの増加に懸念を示した。遺産地域外では外来種が多く、被害も大きいとして、「人の生活に関わりの深い遺産地域外の対策も重要」と指摘した。

 

調査に参加した住民の報告があり、奄美せとうち観光協会ガイド部会の國宗弓穂さんは耕作放棄地で行ったアメリカハマグルマの駆除の取り組みを紹介。「住んでいる地域はマップの空白地が多い。身近なところから広げて調査に協力したい」という声もあった。

 

NPO法人徳之島虹の会理事の美延治郷さんは徳之島の外来植物の調査を紹介。種類の多さや分布状況が「考えている以上に深刻。官民が連携して継続的に取り組むことが重要」と呼び掛けた。沖縄島や西表島の状況について、琉球大学の研究者らの報告もあった。

 

奄美大島では2023年度も住民向けのモニタリング講習会や調査を予定している。鹿児島大学の鵜川信准教授(環境学)は「機器の操作方法などの課題を改善していく。少しずつ参加者を増やし、島全体に調査を広げたい」と述べた。