徳之島のネット不通、影響大 災害匹敵、官民挙げ再発防止を

2023年02月04日

社会・経済 

通信障害を宿泊客に伝える看板。幸いにも苦情などはなかったという=1日、徳之島町亀津の宿泊施設

徳之島のインターネットでの光回線の通信障害により、1月24日から2月1日まで島全体でインターネットが使用できなくなった。幸いにも島民の安全や健康への影響はなかったが、積極的にICT(情報通信技術)を活用する企業への影響は大きく、早期復旧や再発防止を求める声が強く聞かれた。今回の通信障害を津波や地震のような災害と同じように捉え、他のインフラと同様の備えを訴える専門家の声もある。

 

■海底ケーブル断線

 

通信障害の原因はトカラ列島の宝島近辺の海底ケーブルの断線。ケーブルを管理運営するNTT西日本によると、陸地から約300メートルの海底で断線を確認したが、原因は調査中。ケーブルの修復には最長で6カ月かかるという見方もある。同社と徳之島の光回線を管理運営する徳之島ビジョンの調整により、1日に復旧した。

 

■影響、多方面に

 

徳之島ビジョンによると、島内の契約数は約4千件。最も影響が大きかったのは宿泊施設だった。スポーツ合宿シーズンを迎えているホテルサンセットリゾート(天城町)の宮田正行代表取締役(48)は「ほぼ満室の時期で、クレジットカードでの決済ができないなど多くのお客さまに不便をかけた」とため息。ホテル・レクストン徳之島(徳之島町)の津田欣一郎支配人(46)は「ネット予約の中断で影響は大きい。自動チェックイン機なども使用できず、代わりに業務を担うスタッフの負担も増した」と訴えた。

 

影響は建設業にも。渕上建設工業(徳之島町)の担当者は「電子入札やネットバンキングでの支払いなど、業務でインターネットは必要不可欠。急いで代替回線を用意し何とか対応できた」と苦労を明かした。同様の対応を取った事業所は多かったとみられ、ドコモショップ徳之島店(徳之島町)の担当者は「携帯電話でデータ通信ができる無線ルーターの契約が急増した。通信障害以降、12個あった在庫はすぐになくなり、追加で70個を取り寄せた」と語った。

 

■なぜ徳之島だけ?

 

宝島で断線したのなら他の島々にも影響が出そうなものだが、なぜ徳之島だけだったのか。県内離島のインターネット事情に詳しい鹿児島大学情報基盤統括センターの升屋正人教授(54)は「奄美群島のインターネット回線は奄美群島、トカラ列島を島伝いに県本土とつながるルートと、沖縄と県本土を結ぶルートの二つの海底ケーブルにつながっており、本来は1カ所が不通になっても他のルートで迂回(うかい)できる。今回の通信障害でも、他社のインターネット回線が使えたのはそのため」と解説。

 

徳之島だけで通信障害が起きた理由を「徳之島ビジョンとNTT西日本との契約回線がトカラ列島経由で北上する1ルートのみだった。当然その回線が断線すると不通になる」と説明し、「他の島々が2ルート確保しているのに対して徳之島は1ルートだけ。通信障害の起きるリスクは2倍だった」と補足した。

 

■通常時の備え大切

 

今回の通信障害発生について、升屋教授は「今後は地震や津波などの災害と同様に通常時の備えが大切。もし今回、他の回線も不通になっていたらどれほど影響が拡大していたか想像してほしい」と強調。「離島のインフラは整備にも維持管理にも金がかかる。その事を理解した上で対策が必要。情報通信事業の赤字を補充する国の制度などを活用し、官民を挙げて再発防止に努めるべき」と念を押した。