治療、完治後に放獣 徳之島では初 保護のクロウサギ 環境省

2023年02月04日

完治後に山に放されたアマミノクロウサギ=1月31日、徳之島町花徳(環境省徳之島管理官事務所提供

環境省徳之島管理官事務所は3日、先月中旬に徳之島町内で負傷している状態で保護された国指定特別天然記念物のアマミノクロウサギ1匹を奄美大島の動物病院に搬送して治療し、見つけた場所の近くの山で放獣したと発表した。同事務所によると、奄美大島で治療を受けた個体が完治し、徳之島で野生に返されたのは初めて。

 

発表によると、放獣したクロウサギは雄の幼獣。1月18日午前8時ごろ、徳之島町花徳の県道上で動けなくなっていたところを地域住民が見つけた。

 

連絡を受けた同事務所職員が保護した後、治療が必要と判断し、奄美大島へ搬送。同日、奄美市名瀬にあるゆいの島どうぶつ病院で、化膿(かのう)していた頭部のけがを抗生剤などで治療。完治に伴い、同月31日に徳之島へ空輸して花徳付近で山に放した。

 

同事務所によると、頭部のけが以外には骨折などはなく交通事故以外の可能性が高いが、原因は不明。奄美大島への輸送費は奄美野生生物保護基金から拠出したという。

 

徳之島では2015年に徳之島町母間で保護されたアマミノクロウサギの雌の幼獣が奄美大島の動物病院で治療を受け、その後県本土の動物園に送られた例や、奄美大島での放獣例はあるが、徳之島に戻されて放獣されたのは初めて。

 

同事務所の田口知宏国立公園管理官(28)は「保護をしても死んだり障がいが残ったりする個体が多いため、今回のように放獣できるのは極めて珍しい」と説明。

 

昨年は島北部の県道629号で野生動物の交通事故が17件と多発したことにも触れ「クロウサギ保護のためにも、夜間の運転は注意してほしい」としたほか「条例で禁止されているネコの室外飼育や野良ネコへの餌やりは決してしないで」と呼び掛けた。