猫が固有のトゲネズミ捕食 奄美大島

2019年10月04日

アマミトゲネズミを捕食する子猫=9月26日午前9時40分ごろ、奄美大島の山中(山室一樹さん撮影)

アマミトゲネズミを捕食する子猫=9月26日午前9時40分ごろ、奄美大島の山中(山室一樹さん撮影)

  奄美大島の山中で9月、親子とみられる複数の猫が国の天然記念物で同島固有のアマミトゲネズミを捕食しているのを、県自然保護推進員の山室一樹さん(58)=大和村=が目撃し、撮影した。現場は希少な野生生物が多く生息する奄美群島国立公園の第1種特別地域内で、奄美・沖縄の世界自然遺産推薦区域。環境省は「山中で繁殖した可能性が高い。継続して猫の捕獲に力を入れたい」と述べた。

 

 アマミトゲネズミは体長約9~16センチ、尾の長さ6~13センチ。背面は黒褐色に黄褐色が混じり、腹部は灰白色。全身に2センチほどのとげ状の毛がある。森林開発やマングースによる捕食被害などで激減し、同省のレッドリストで絶滅危惧ⅠB類に位置付けられている。

 

 猫による捕食が確認されたのは、奄美最高峰・湯湾岳(694メートル)の中腹を通る宇検村の村道沿い。9月26日午前9時40分ごろ、山室さんが希少種保護パトロール中に、トゲネズミを食べている子猫4匹と母親とみられる成猫1匹を発見し、写真に収めた。

 

 山室さんが近づくと猫たちは山の中に逃げたが、同日午後2時半ごろ、トゲネズミの死骸を回収するため現地に立ち寄ったところ、同じ猫5匹が再び集まっていた。

 

 山室さんは「外来種である猫が山の中で繁殖していることがあらためて証明されショックだ」と話す。

 

 同島では2008年6月、猫が国の特別天然記念物アマミノクロウサギを捕食する姿を環境省の自動撮影カメラが捉えた。その後も猫が希少種を捕食する様子が確認されている。

 

 同島の森林部には600~1200匹の猫が生息していると推定される。クロウサギなどの希少種を襲って生態系への影響が懸念されることから、同省と県、島内5市町村は18年3月、同島のノネコ(野生化した猫)管理計画を策定。計画に基づいて同年7月、山中での捕獲を開始した。

 

 計画には捕獲した猫の譲渡先が見つからない場合、「安楽死」とする処分が盛り込まれたことから、動物愛護団体などから反発の声も出ている。山室さんは「猫の捕獲を批判する人もいるが、犠牲になる多くの在来種を守るためであると理解してほしい」と訴えた。

 

 環境省奄美群島国立公園管理事務所の早瀬穂奈実国立公園管理官は希少種の被害防止へ「ノネコの元になる猫の適正飼養を徹底してほしい」と呼び掛けた。

奄美大島固有のアマミトゲネズミ(環境省提供)

奄美大島固有のアマミトゲネズミ(環境省提供)