身近な生き物の暮らし学ぶ 研究者2人が最新の知見紹介 あまみワイルドライフセミナー 奄美市

2024年03月03日

奄美・沖縄の生き物について研究者2人が最新の知見を紹介したワイルドセミナー=2日、奄美市名瀬

環境省奄美野生生物保護センターなど主催の2023年度あまみワイルドライフセミナーが2日、奄美市名瀬の奄美川商ホール(奄美文化センター)であった。奄美大島、徳之島、沖縄島を含む「中琉球」の生き物をテーマに、研究者2人が最新の知見を紹介。奄美・沖縄の動植物の研究を深めていくために「専門家だけではなく地域の人が関心を持ち、調査に参加することが重要」と呼び掛けた。

 

森林総合研究所九州支所森林動物研究グループ主任研究員の小高信彦氏が「森の動物たちのくらしとドングリの豊凶」、奄美野鳥の会理事の鳥飼久裕氏が「海を渡ったアマミヤマシギ」の題でそれぞれ講演。約50人が参加した。

 

小高氏は中琉球の森林に住む生き物の個体数や分布域と、森のドングリの豊凶の関係性などを調査している。その中で、生息分布面積が急速に縮小していたオキナワトゲネズミが近年、外来種のマングース対策や森林の保全によって生息域が回復傾向にあることを紹介し、「本来の自然環境に近い状態で森を守ることが生き物にとって最も大切だ」と述べた。

 

鳥飼氏は奄美・沖縄の固有種で、奄美大島や徳之島周辺だけで繁殖が確認されている希少な野鳥アマミヤマシギの生態を解説。▽奄美大島では12月から1月にかけてはほぼ夜行性▽春から秋は森林内では日中、林道上では早朝や夕方によく行動している▽沖縄島北部から約190キロ離れた奄美の繁殖地への飛来が確認された│と紹介した。

 

小高氏はアマミトゲネズミ、トクノシマトゲネズミ、オキナワトゲネズミも季節によって行動時間が違い、またそれぞれの生息地によっても違いが見られると補足。捕食者であるハブやサシバ、オオコノハズクなどへの適応ではないかと仮説を立て、「各島の調査結果を比較することで環境の違いや特徴が見えてくる」と長期的な調査研究の意義を語った。

 

セミナーには大島高校生物部の生徒らも参加し、小高氏と共に龍郷町で行ったドングリの豊凶調査の様子や自動撮影カメラによる生き物のモニタリング調査の結果などを報告した。

 

生物部に所属する大島高2年の盛蒼太郎さん(17)は「講師2人の発表を聞いて、時間をかけて仮説を検証していく研究の楽しさと奥深さに触れられた。将来は自分も人のためになるような研究をしたい」と話していた。