過去最多、6千人超 奄美近海のホエールウオッチ 23年季調査 ザトウクジラ、増加傾向続く

2023年04月21日

母親のザトウクジラに寄り添って泳ぐ生まれたばかりの子クジラ=2月16日、奄美大島沖(興克樹さん撮影)

奄美クジラ・イルカ協会(興克樹会長)は20日、冬から春にかけて奄美大島近海に来遊するザトウクジラの2023年シーズンの調査結果(4月17日現在)をまとめた。出現確認数は1696頭で、過去最多だった前季(1767頭)に次いで過去2番目に多かった。母子を含む群れの出現数は204組で、前季(158組)の約1・3倍に上り、過去最多を更新した。加盟14事業者によるホエールウオッチングには過去最多の6309人が参加した。

 

調査は同協会の加盟事業者が海上を中心にクジラの出現状況を確認した。今季は22年11月24日に大和村沖で初確認。1月上旬から出現が増え、2月下旬に来遊ピークを迎えた。

 

調査を本格化した14年以降、クジラの出現確認数は増加傾向。今季の調査では395頭分の尾びれの識別写真が新たに得られ、発見位置と個体識別から、クジラの群れが▽奄美大島を島沿いに移動している▽多くが南部の島しょ域で滞留している▽喜界島と行き来している―ことも明らかになった。

 

ホエールウオッチングの参加者は前季(4961人)の約1・2倍。そのうち、海に入って泳ぎながらクジラを観察する「ホエールスイム」には3481人が参加し、全体の55・2%を占めた。

 

ホエールスイム参加者の増加を受けて同協会は今季、スイムがクジラの生態に与える影響評価調査を開始。スイム全体の49・5%が、休息や授乳時間が必要な母子群とのスイムになっていることから、6回を上限としていた母子群とのスイム回数を減らすなど、自主ルール見直しを図っている。

 

興会長は「今後はスイムを実施したクジラが再び同じ海域へ戻ってくるか、識別個体の回帰率も調査していく。中長期的な観測を継続し、繁殖環境の保全に努めたい」と話した。

 

ザトウクジラは体長12~14㍍、体重30㌧にもなる大型のヒゲクジラ。頭部のこぶ状の突起と長い胸びれが特徴。夏場はロシアやアラスカなどの冷たい海で餌を食べ、冬季に繁殖や子育てのため、国内では沖縄や小笠原などの暖かい海域へ移る。