過去最多107羽確認、野鳥の会が一斉調査 オオトラツグミ「確実に増加」 奄美大島

2022年03月21日

奄美大島だけに生息するオオトラツグミ

奄美大島だけに生息する国の天然記念物の野鳥オオトラツグミの一斉調査が20日、島を縦断する奄美中央林道などであった。島内外から142人が参加し、林道を歩いて鳴き声を聞き取った。生息確認数は107羽で、1994年の調査開始以降で最多となった。調査を行ったNPO法人奄美野鳥の会は「分布域が拡大し、生息数が確実に増加している証拠」と手応えを示した。

 

調査は奄美市名瀬から宇検村までの中央林道と支線など約45㌔で実施。参加者らは2、3人一組に分かれて、夜明け前の午前5時半から1時間、それぞれ往復4㌔を歩いてオオトラツグミのさえずりに耳を澄ませた。「キュロロン」という鳴き声を確認すると、方角や時間を地図に記録した。

 

鳴き声を聞いて記録する調査員=20日午前6時ごろ、奄美市名瀬の奄美中央林道

初めて参加した龍郷町赤尾木の羽利美樹さん(41)は「鳴き声が鮮明に聞こえて感動した。世界自然遺産になった奄美の自然を身に染みて感じた」と話した。一緒に歩いた岐阜大学3年の川嶋梨湖さん(21)=岐阜市=は「昨年参加して、とてもきれいなさえずりを聞いてまた来たいと思った。今年もたくさん聞くことができてうれしい」と笑顔を浮かべた。

 

調査は奄美野鳥の会がオオトラツグミの生息状況を把握して保護につなげようと、毎年ボランティアの協力を得て繁殖期の3月を中心に行っている。今年で29回目。奄美中央林道の一斉調査でこれまでの最多は2016年の106羽だった。

 

記録更新について、同会の鳥飼久裕会長(62)は「森林が回復し、マングースもいなくなって生息場所が拡大している。天気がよく聞き取りやすかったことも一つの要因」と分析。今後の調査について「増加傾向が続けば、個体を確認する精度が低くなる恐れがある。やり方を見直す時期にきている」と話した。

 

オオトラツグミは同島の原生的な照葉樹林内に生息。森林開発などで生息数が減少し、環境省のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類。93年に種の保存法に基づく国内希少種に指定され、保護されている。