奄美大島出身アーティストが集結 楽曲「懐かしい未来へ」浸透へ 唄島プロジェクト
2019年01月01日
芸能・文化
時代が変わっても「懐かしい」という思いを未来にも伝えていきたい―。奄美大島出身のアーティストが集結して、ひとつの歌を作り上げる「奄美唄島プロジェクト」。2018年10月に「懐かしい未来へ」(制作・奄美大島自然保護協会)をリリースした。制作発表からCD発売までを振り返り、同プロジェクトの企画制作プロデューサー麓憲吾さん(47)に19年以降の展開を聞いた。
「懐かしい未来へ」の制作発表記者会見は2018年5月29日、奄美市名瀬の大浜海浜公園であった。元ちとせさんや中孝介さんら奄美大島出身アーティスト14組が出席。「シマを見詰め直して、守るべきものを感じながら新しい音楽を一つ作れることをうれしく思う」(元さん)、「奄美の自然や文化のあるがままを伝えたい」(中さん)。
♪ヤナギヤクインテット再結成
楽曲制作を受けて、奄美市名瀬出身のボーカルグループ「ヤナギヤクインテット」のメンバー5人が18年7月18日、名瀬のライブハウス「アシビ」に結集し、25年ぶりのレコーディングに臨んだ。リーダーのミッチさんは「奄美を代表する若いアーティストたちと共演できて光栄」と笑顔を見せた。
ヤナギヤクインテットは1983年に結成。5人組アカペラグループとして人気を博し90年にメジャーデビューを果たした。奄美大島出身のポップスグループの先駆的な存在。
♪児童生徒も参加。唄島キャンプ
歌や音楽を通して文化意識を高める宿泊研修「唄島キャンプ」(NPO法人ディ!主催)を18年8月14、15の両日、奄美市名瀬の県立奄美少年自然の家で開催。児童生徒約50人が参加し、島にゆかりのある唄者やアーティストらを講師に奄美の自然や歴史、文化について学んだ。
奄美大島在住の音楽ユニット、カサリンチュらを講師に「懐かしい未来へ」の歌唱指導も。児童生徒の歌声はCDに収録されている。
♪楽曲初披露。奄美環境文化フォーラム
「懐かしい未来へ」を初披露したのは18年10月27日、奄美市名瀬のホテルであった奄美環境文化フォーラム(奄美大島自然保護協会主催)。フォーラムでは講話やトークセッションを通して島の貴重な自然と文化の豊かさを再認識した。
トークセッションに参加したポップス歌手の我那覇美奈さん(奄美市名瀬出身)は東京で島唄を聴いたときに感じた「懐かしい」という思いから「自分の中の奄美を実感した」。奄美市笠利町の島唄クラブに幼少期から通い、古里の良さを学んだという唄者の中村瑞希さんは「今度は私たちが伝えていく立場」と力を込めた。
♪CD発売記念「唄島ふぇすてぃばるっち」
CD発売記念イベント「唄島ふぇすてぃばるっち」(同実行委員会など主催)が18年10月28日、奄美市名瀬の大浜海浜公園であった。アーティスト19組が島唄やポップスなど多彩なステージを披露し、約2000人の観客を魅了した。
晴れていく天(そら) 満ちてゆく海 廻りゆく時 繋がってく想い 螺旋(らせん)を描くように いつかきっと行けるはず 懐かしい未来へ―。
フィナーレは、アーティストや唄島キャンプに参加した児童生徒らが楽曲を大合唱した。
♪2019年について。
麓さんは18年12月19日、「懐かしい未来へ」について、「島の人が島を感じられる象徴的な歌ができた。光を放つ太陽みたいなもんだと思う。19年は太陽の下、種を植えていくイメージ。いつか花開かせるために、歌や思いを浸透させたい」と語った。
同曲のCDは奄美大島の幼、小、中、高校へ配布した。「楽曲を生かし、19年はアーティストが小中学校などを訪問し、各校で唄島キャンプのような活動を考えている」と新たな構想も明かした。
「世界自然遺産登録後を見据え、奄美の魅力である自然や文化をどう活用していくかは島全体の課題。島の人が次世代のために残すもの、守るものを考える意識づくりにつながるような活動を今後も続けたい」とも語った。