作品から一村の魅力探る 千葉市美術館 松尾学芸課長が講演 県奄美パーク

2022年08月09日

芸能・文化

作品から一村の生涯や代表作の魅力について語った松尾知子学芸課長=7日、県奄美パーク

県奄美パーク・田中一村記念美術館の美術講演会が7日、奄美市笠利町の同パークであった。千葉市美術館の松尾知子学芸課長が講演。代表作「不喰芋と蘇鉄」について「見る人を圧倒する力があり、一村が東京、千葉時代に身に付けた技術や構成原理の集合体といえる」と語った。

 

松尾さんは2010年に千葉市美術館、鹿児島市立美術館、田中一村記念美術館が合同で開催した展覧会「田中一村 新たなる全貌展」について、「美術館が主体となった初めての展覧会であり、編年や作品名の確認・訂正、全作品の目録と個別の解説作成、典拠を示した年譜の再編集などが行われた」と紹介。

 

展覧会開催後10年間で新たに確認された作品や資料を基に▽空白期とされてきた昭和5、6(1930、31)年頃も多数の作品を残している▽金びょうぶや旅先でのスケッチなど支援者とのつながりを確認できる▽南画、山水画も描き続けている│と指摘し、それまで語られてきた「昭和5、6年ごろに支援者と断絶、南画と決別し花鳥画へ進んだ」という説を否定した。

 

作品の変遷を示しながら一村が自身の作風を意欲的に探っていたことを解説したほか、奄美移住後の代表作「不喰芋と蘇鉄」については、描かれたモチーフや絵の構成、使用した画材などを詳細に解説。「近景に現実世界、遠景に異界を描くという伝統的理論に基づきながら、一村がこれまでに身に付けたすべてを用いて後世に残す作品を作ろうとしていたことが分かる」と語った。