奄美の芸能映像 可能性探る プロジェクトの成果報告 国立民族学博物館

2024年02月05日

芸能・文化

奄美の芸能の映像活用について成果報告や発表があった研究集会=4日、龍郷町りゅうがく館

奄美大島と徳之島の芸能を記録した映像の活用に関する研究集会が4日、龍郷町りゅうがく館であった。国立民族学博物館(大阪府)が実施するプロジェクトの一環で、同博物館の研究者や地元学芸員など12人が発表。プロジェクトの成果を報告し、今後の研究における映像資料の可能性を探った。

 

同博物館の笹原亮二教授が代表を務める「人類文化アーカイブスプロジェクト」では、2022年度から23年度にかけて、奄美大島と徳之島の芸能に関する所蔵映像の整理・集積・公開に取り組んだ。

 

具体的には、過去に記録された映像資料をまとめた「フォーラム型データベース」を構築。八月踊りや島唄などの映像や歌詞・解説を自由に検索でき、視聴者がコメントや動画を投稿できる機能も設けた。24年夏ごろをめどに、インターネット上での本格運用を目指し準備を進めている。

 

画面上で映像を選択して視聴できる閲覧システムも整備し、展示用のマルチメディア番組「奄美大島の踊りと歌と祭り」「徳之島の歌と踊りと祭り」を制作。現在、龍郷町と瀬戸内町、徳之島3町の資料館で各島の番組が試験公開されている。

 

研究集会ではプロジェクトの成果や課題を共有し、今後の映像資料の活用の在り方を検討。笹原教授は「データベースは、より現場の実態に基づいた研究を可能にする。公共的な資料空間として映像を引用・参照文献のように使用することもできる」と期待した。

 

同博物館の福岡正太教授は「映像は音と動きが分かり繰り返し視聴できるが、手本として使われ、人から人への伝承を阻害することにもつながる」と長所と短所を挙げた。その上で、記録や教材としての役割だけでなく「集落の記憶を刺激し、島の芸能の将来を考える機会になる」と、映像資料活用の意義を述べた。

 

このほか、龍郷町、瀬戸内町、伊仙町、天城町の学芸員などが各地域の島唄・八月踊りの継承状況や、マルチメディア番組の展示の実践についてそれぞれ報告した。

 

総括討論では、「行政も資料のデジタル化を基本事業として組み込む流れをつくっていく必要がある」「ソト(外部)とウチ(地元)がつながり、一緒に映像を活用することで、それぞれが持つ知識を引き出すことができるのでは」などの意見が上がった。

 

訂正 4日付9面「八月踊り継承へ意見交換」の記事で、写真説明に「データベース」とあるのは「マルチメディア番組」の誤り。映像を画面上で選択して視聴できる展示用の閲覧システムのこと。訂正して写真を再掲します。