海のかなたに豊作祈る 平瀬マンカイ 龍郷町秋名・幾里

2022年08月01日

芸能・文化

山腹に建てた祭壇に手を合わせ、豊作の祈りを込めて祝詞を上げる窪田会長=31日午前6時ごろ、龍郷町秋名

旧暦8月最初の丙(★ひのえ)の日に当たる31日、龍郷町の秋名・幾里地区でアラセツ(新節)の伝統行事「平瀬マンカイ」が行われた。新型コロナウイルスの影響で昨年と同様に地元の関係者のみで実施し、豊作や地域の安寧を願って海のかなたの神々の楽園「ネリヤカナヤ」へ祈りをささげた。同日早朝の「ショチョガマ」は祭事のみ執り行った。

 

秋名アラセツ行事は一年の収穫に感謝し、来年の五穀豊穣(★ほうじょう)などを祈る稲作儀礼。早朝、集落を見下ろす山の中腹で男衆が片屋根のわらぶき小屋を揺さぶり倒す「ショチョガマ」と、夕刻に海岸で行う「平瀬マンカイ」があり、1985年に国の重要無形民俗文化財に指定されている。

 

毎年島内外から多くの見物客が訪れる伝統行事だが、新型コロナウイルスの影響で2020年は平瀬マンカイのみ無観客で開催。21年はショチョガマを祭事のみ、平瀬マンカイは関係者だけで実施した。

 

今年も人が密集して声を発するショチョガマは中止となり、秋名アラセツ行事保存会の窪田圭喜会長(81)と両地区の区長の3人だけで山腹の祭壇に赤飯と焼酎、ミキを供えた。

 

平瀬マンカイは午後4時すぎに開始。沖側の「神平瀬」にノロ役の女性5人、集落側の「メラべ(女童)平瀬」に補佐役の男女7人が上がり、唄の掛け合いと手踊りを繰り返してネリヤカナヤへ祈りをささげた。最後は保存会以外のメンバーも加わり、約30人が浜辺に八月踊りの輪をつくった。

 

同保存会によると平瀬マンカイは1945年以降、一度も途切れたことがない。窪田会長は「台風11号の影響が心配される中、今年もなんとか無事終えることができた。新型コロナで3年連続縮小を余儀なくされ寂しい限りだが、来年こそはにぎやかに祭りの音色を響かせたい」と力を込めた。

海のかなたの神々に五穀豊穣を祈る「平瀬マンカイ」=31日午後4時すぎ、龍郷町秋名