災い払い、先祖に祈る 群島各地で「シバサシ」行事 龍郷町・喜界町

2022年09月07日

芸能・文化

玄関先にシバを差す住民=6日、龍郷町秋名

旧暦8月の「アラセツ」から数えて7日目に当たる6日、奄美群島各地で伝統の「シバサシ(柴差し)」行事があった。住民らは災いを払うとされるシバ(ススキなど)を屋敷の軒や庭、畑などに差し、無病息災と集落の繁栄、五穀豊穣(ほうじょう)などを祈った。

 

シバサシは旧暦8月の最初の丙(ひのえ)の日である「アラセツ(新節)」に連なる祭り日で、アラセツ後の壬(みずのえ)の日に行われる。その後の甲子(きのえね)の日にある「ドゥンガ」と合わせ、奄美群島ではこの3日を「ミハチガツ」と呼ぶ。

 

日取りの数え方や内容は地域ごとに違いがあるが、ミハチガツには群島各地で祭事が行われ、住民たちは先祖へ膳を供えたり、八月踊りで家々を回ったりして家族の健康や地域の発展、豊作などを願う。

 

龍郷町秋名・幾里地区では6日、住民らが「シバ」と呼ぶ「トウズキ(トキワススキ)」を玄関先や庭に差した。同地域では前日夕方と当日朝にコウソガナシ(先祖の神)に膳を供えるほか、シバを飾った後は夕方に屋敷の門前で干したヒンジャグサ(オヒシバ)、もみ殻、牛ふんを燃やして悪病を払うという。

 

玄関先の軒にシバを差した同地区里の西田勝美さん(83)は「予防注射などない時代から、悪いものが家に入らないようにという願いを込めて行ってきた。昔はいろいろな行事があったが今ではやる人も少なくなった」と話した。

 

喜界町北部の集落でも同日、伝統の「シバサシー」があった。住民らは自宅や墓にシバ(ススキ)を差し、墓前にごちそうや酒を供えて先祖に感謝した。同町小野津の70代女性は「シバサシーのために帰省している親族もいる。(台風11号の影響で)天気が悪かったが、なんとかお墓にも行けてよかった」とほっとした様子で話した。

墓前にシバを差し、供え物をする家族=6日、喜界町小野津