足跡たどり価値を再認識 美術館講演会で一村語る 奄美市笠利町

2023年09月03日

芸能・文化

元田中一村記念美術館学芸専門員の花山潤治氏が一村の足跡や作品について語った美術講演会=2日、奄美市笠利町

奄美市笠利町の県奄美パーク・田中一村記念美術館主催「美術講演会」が2日、同パーク奄美の郷・屋内イベント広場であった。元同美術館学芸専門員の鹿児島市立美術館学芸アドバイザー、花山潤治氏(62)が「アーと心が動く一村さん─奄美の田中一村」と題して講演。奄美勤務時に一村終焉(しゅうえん)の地周辺で調査した足跡を改めてたどり、再認識した作品の意味合いや価値などについて語った。

 

田中一村(本名・田中孝)は栃木県出身の日本画家。1958年に50歳で奄美大島へ移り、69歳で死去するまで奄美の自然景観や動植物などを描き続けた。花山氏は一村が晩年を過ごした現在の奄美市名瀬地区で当時を知る人に話を聞き、地理を調べるなどした。

 

花山氏は自らの調査結果などを踏まえ「一村は絵を描くために奄美に来て、計画的に働き、よく歩いて健康にも気を配っていた」と一村の人となりについて力説。絵描きに集中するための資金計画も立てていたといい「Iターンの先駆けとも言える」と表現した。

 

さらに代表作「アダンの海辺」「不喰芋と蘇鉄」をはじめ年代ごとの作品を紹介し、画風の変遷やその背景心情にも持論を添えた。「絵を描くことを心から楽しんでいたはずだ。一村自身も『自分のため』と考えていたとの記録がある。皆さんも一つ一つの作品と向き合ってみて」と伝えた。

 

講演会には奄美大島内外から一村作品のファンなど50人余りが来場。盛んに質問や感想を交わした。