学生ら相互理解深める 国内外4大学が参加 徳之島国際ユースキャンプ
2024年02月03日
子ども・教育
日本と海外の若者が交流し相互理解を深める文化外交「徳之島国際ユースキャンプ」が1月28日から2月2日にかけて、伊仙町などであった。東京大学先端科学技術研究センターを母体とする研究機関「創発戦略研究オープンラボ」が主催し、国内外の大学生や大学院生、教員ら計19人が参加。戦争の記憶継承を主なテーマに、奄美群島の日本復帰など各国・地域の戦中戦後の経験を基に意見を交わした。徳之島の名所を巡ったり、地元住民と触れ合ったりして、島の歴史や文化も体感した。
同研究機関が外務省の外交・安全保障調査研究事業関連の補助金を得て、2023年度から3年間の計画で実施している研究事業の一環。
事業には13の研究会が携わっており、このうち東京大学の西村明准教授(50)が座長を務める研究会「宗教と社会の関係の検証と再構築」が今回のユースキャンプを企画した。徳之島での実施は初めて。
参加大学はサラエボ大(ボスニア・ヘルツェゴビナ)、済州大(韓国)、東京大、鹿児島大。来島翌日の29日は開会式があり、伊仙町社会教育課町誌編纂(へんさん)室の松岡由紀室長が「奄美群島の日本復帰」、西村准教授が「奄美群島の宗教史と戦争死者慰霊」について講演した。
30日は、伊仙町の泉芳朗頌徳記念像や戦艦大和慰霊塔、徳之島町の富山丸と武州丸の慰霊碑などを巡った。31日は海外の事例から戦争の記憶継承を考える国際シンポジウムを開催。活動最終日の2月1日には報告会があり、学生らが4日間で学んだことや感じたことを英語で発表した。
参加したサラエボ大のベルミン・デリチさん(22)は「徳之島の町は清潔で人も友好的。修士課程で政治学を専攻しているので、島の地域の在り方がボスニアの社会づくりにも生かせると感じた。たくさんの学びを得られた」と感想。
済州大のチョウ・スージンさん(41)は「かつて日本に徴用された朝鮮人について大学院で研究している。奄美群島にも朝鮮人がいたらしいので、彼らが当時どんな景色を見ていたのか追体験することができた」と振り返った。
東京大学の山田絵玲紗さん(25)は「これまで戦争について広島や長崎、沖縄など主要な場所のみで理解していたが、奄美の米軍統治下を知り、異なる側面から学ぶことができた。島は自然豊かで隣人とも仲良くする文化。都会とは豊かさの定義が違うと感じた」と話した。
鹿児島大の要田ののかさん(20)は奄美大島出身。「英語力を鍛えると同時に地元奄美について考える機会だと思い参加した。普段から各国の人たちがどういう視点や価値観を持っているのかに関心がある。海外の学生たちとの生活を通して文化の違いを体験できて面白かった」と語った。
西村准教授は「学生たちは戦争の歴史だけでなく、島の暮らしや人々の温かさにも触れられたと思う。20年、30年先を見据えてこれから何ができるかを考えるきっかけにしてくれれば」と期待した。